子どもたちのメンタルヘルスについて(その3) | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」

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子どもたちのメンタルヘルスについて

Ⅲ.行為障害(非行臨床)

(1)非行と行為障害との関連

非行は、子どもの社会的な逸脱行動全般を意味することもありますが、少年法に基づく法的概念であり、次の3種類に分けて男子と女子を区別せずに「非行少年」と呼んでいます。

①犯罪少年
14歳以上20歳未満の罪を犯した少年。犯行時14歳以上、特に16歳以上の少年が故意に被害者を死亡させれば原則として刑事裁判を受け、実刑となれば少年刑務所などで受刑することになり、18歳以上であれば死刑をいい渡される可能性もあります。
②触法少年
14歳未満で刑罰法令に触れる行為を行った少年。14歳が刑事責任年齢であり、それ未満は、児童福祉法上の措置が優先されて警察から児童相談所などに通告され、さらに、児童自立支援施設(旧教護院)などへの入所措置がなされることもあります。
③ぐ犯少年
20歳未満で、正当な理由がなく家庭に寄り付かないこと、犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りすることなど、その性格・環境から、将来、犯罪や触法行為を行うおそれのある少年も警察により補導されます。

以上の3つのほかに、警察では、飲酒・喫煙・けんかなどの「不良行為」や虐待・酷使され、または放任されている少年も補導や保護の対象としています。

一方、操作的な診断基準であるDSM-Ⅳなどによって採用された医学上の概念が「行為障害(conduct disorder)」です。10歳未満発症の「小児発症型」は、それ以上で発症した「青年期発症型」に比べ、他者への身体的攻撃行動を示す行動が著しく、社会的予後が不良であることなどが指摘されています。

(2)行為障害の併存障害

行為障害は、一般的には併存障害を伴うときには、より重篤な症状を示すことになりますが、行為障害と関連性の高い精神疾患を挙げます。

●注意欠陥/多動性障害(AD/HD)

AD/HDの主症状は、不注意・多動性・衝動性であり、いわゆる「キレる」と呼ばれる短気で乱暴な衝動行為が他者に向けられるという事態が少なからず生じえます。AD/HDが併存した場合には、行為障害の発症年齢が早い、多くの身体的攻撃性と経過が長くなるとの指摘もあります。

●統合失調症と気分障害

統合失調症がひそかに進行し、惰性の欠如ないし感情鈍麻と道徳性・規範性の崩壊の表現である盗み、暴力行為、性的逸脱として現れることがありますが、共犯がおらず単独で行われることに特徴があります。また、双極性障害の躁病の時期に、気分の高揚、万能感と攻撃性の高まり、乱費癖といった諸症状が、薬物乱用、性的逸脱などの非行として顕在化することがあるので留意したいです。

●アスペルガ一障害

アスペルガ一障害の子どもに共通する特徴として、他者の気持ちを察し共感する能力の乏しさ、物事に対するこだわりの強さ、暗黙のルールを読みとる能力の低さなどが指摘されています。そのため、起きた結果や被害者の心情に関して極端に無関心で、「人を殺す経験をしたかった」というような特異な理由づけによる唐突な非行やその強迫的傾向から性非行などが繰り返されることがありますが、きわめて例外的な事案です。

薬物乱用については、有機溶剤(シンナー、トルエン)や覚せい剤に加え、AD/HDに処方される塩酸メチルフェニデート(リタリン)が「合法覚せい剤」としてインターネット上で売買され問題となっています。また摂食障害では、過食・嘔吐が前面に出ている時期には、食物の万引きなどが出現しやすいです。

(3)非行への対処と治療法

内省力の乏しい“悩みを抱えられない”非行少年にとって、親が感情的になるのとは違う治療者とのかかわりのなかで、葛藤を抱える体験は重要な治療的介入です。また、非行行為に少年の攻撃性を認めることは少なくないですが、治療者への攻撃性、そこには親との葛藤から由来する転移感情なども含まれますが、それを指摘し、読み解く少年との共同作業が治療進展のうえで不可欠です。前述のように、非行少年の年齢や非行内容によりかかわる公的な臨床機関が異なるため、その処遇システムを理解し、適切な相談機関・処遇機関につなげていくことが前提となります。

なお薬物療法は、医療少年院などに収容されている少年などに対して限定的に用いられています。

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