日本うつ病学会のガイドラインによると、「現代型(新型)うつ病」は「若年者の軽症抑うつ状態の一側而を切り取ったもので、マスコミ用語であり、精神医学的に深く考察されたものではなく、治療のエビデンスもない」とされます。したがって、医学的に明確な定義があるわけではないが、たとえば、NHKのテレビ番組である「クローズアップ現代」によると、その特徴を、不眠に悩む、職場で激しく落ち込むといった「うつ」の症状を示す一方で、自分を責めるのではなく上司のせいにする、休職中にもかかわらず旅行には出かける・・・と紹介しています。したがって、あえて定義をすれば、職場ではうつになるが自宅では元気という症状の状況依存性、うつに陥った責任を自分よりも会社や上司に帰するという他責任、休職を深刻に捉えていないという病者意識の希薄性を示す若年者の軽症抑うつ状態です。
日本語の「うつ病」自体、定義があいまいであるが、現在、日本うつ病学会で採用しているうつ病の診断基準は、DSM‐Ⅳ‐TRの大うつ病のそれであり、こちらは5つ以上の抑うつ症状が2週間以上持続し、しかも抑うつ気分や意欲低下などがほとんど1日中、ほとんど毎日存在することが前提となっています(DSM‐5も同様)。したがって、会社ではうつだが自宅では元気で趣味に没頭できる人がこの診断基準を満たすことはないです。むしろ、職場では激しく落ち込むという特徴からは、職場への不適応に基づく適応障害の一型(抑うつ気分を伴うもの)というのが正式な診断名です。その原因としては、①上司や同僚の対応や過大な仕事量など職場側の問題、②本人の適応能力、③職場と本人との相性、が考えられます。適応障害の抑うつでも壮年期では自責に傾く症例が少なくないが、若年期で他責的になる場合がいわゆる「現代型(新型)うつ病」といえます。とはいえ、その背景には仕事上での思わぬ挫折に加え、会社からの見捨てられ感も拭われないことが多いです。
まず、双極スペクトラムの抑うつ状態があげられます。なかでも、うつ状態の持続期間が短くて気分の変動が顕著なタイプは、典型的なうつ病の経過と異なるため、気まぐれな性格のせいではないかと誤解されやすいです。また、未熟型うつ病に代表される双極Ⅱ型の患者の一部は、復職のたびに抑うつに陥りながらも、保護的な環境に入ると軽躁状態を呈することがあります。休職中に軽躁状態になった場合は、まさしく「現代型(新型)うつ病」の様相を呈します。
軽躁状態を呈さない反復性短期うつ病性障害の患者でも、毎月のように数日~2週間程度の抑うつ状態を繰り返すために、自分勝手であると誤解されやすいです。
さらに、自閉症スペクトラム障害の患者は、コミュニケーションが苦手で臨機応変な対応がとれないため、職場で不適応を起こしやすく、抑うつ状態に陥りがちであるが、その一方で週末は好きな趣味に没頭して元気であるということが起こりえます。