主に脳の損傷によって起こされる様々な神経心理学的症状。
その症状は多岐にわたり、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害等で脳の損傷部位によって特徴が出ます。
損傷が軽・中度の場合には核磁気共鳴画像法(MRI)でも確認できない場合があります。SPECT(放射断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)など、先端の画像診断で判別されることがありますが、現在では、診断の一材料です。
むしろ、画像診断に神経心理テストなど多角的な診断により「高次脳機能障害」と診断されるケースが多いのも事実です。
その障害は外からでも分かりにくく自覚症状も薄いため「隠れた障害」と言われています。 よく、一言で「高次脳」と略されるため、脳内にそのような部位があるのか、と勘違いされることがありますが、そうではなく、分かりやすく記すれば「高次の脳機能の障害」ということです。
伝統的、学術的、医学的な定義による高次脳機能障害は、脳損傷に起因する認知障害全般を示すものです。例えば症状に失語症または認知症があります。
これに対し、日本の厚生労働省が2001年度から本格的に研究に取り組んでいる「高次脳機能障害」は、行政的に定義されたものといえます。これについては少し説明が必要です。
脳血管障害(いわゆる脳卒中)や、交通事故による脳外傷後に身体障害となる場合があります。身体障害が後遺障害として残る場合と、時間の経過とともに軽快していく場合があります。しかし、身体障害が軽度もしくはほとんど見られない場合でも、脳の機能に障害が生じている場合があります。それが前述の認知障害、つまり行動に現れる障害であるため、職場に戻ってから、問題が明らかになるというケースがあります。つまり、日常生活、社会生活への適応に困難を有する人々がいるにもかかわらず、これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立していないため早急な検討が必要なことが明らかとなりました。
交通事故による高次脳機能障害については、他の公的制度に先駆けて、自動車損害賠偵責任保険(自賠責保険)が2001年から交通事故被害として認定するシステムを構築しています。自賠責保険により、交通事故によって生じた高次脳機能障害として認定されれば、損害賠償の対象として保険金が支払われることとなります。