神経症は、ストレスからくるこころの病気の代表で、誰にでも起こり得る病気です。以前はノイローゼと呼ばれていましたが、最近では不安障害とも呼ばれています。つまり、自分の住む社会にうまく適応できず、心身にさまざまな症状が現れます。ストレスに弱い性格の人は、些細なストレス刺激でも神経症になりがちです。また、ストレスに強い人でも、大きなストレス刺激を受けると、神経症になってしまいます。
神経症には、不安神経症、解離性障害、強迫神経症など、さまざまな種類があります。
不安がストレートに現れます。この不安は、対象がはっきりしたものではなく、自分の身体機能や生存に対する不明瞭な不安で、動悸、頻脈、呼吸困難といった自律神経失調症状を伴うことが多いです。
突然、激しい不安に襲われ、パニック発作(動悸、頻脈、胸痛、吐き気、発汗、めまい、呼吸困難など)を引き起こし、今にも死ぬのではないかという恐怖でなすすべがなくなってしまう状態です。発作は数分~数十分続いて治まりますが、軽い場合でも週に1度、重い場合は週に3~4回繰り返します。
さまざまなことが心配になって落ち着かず、常に緊張してリラックスできないうえ、震え、筋肉の緊張、発汗、めまい、頭のふらつきなど多彩な身体症状を伴います。そのため、慢性的に憂うつになったり、おっくうになったりすることもあります。
あまりに大きなストレスに見舞われると、意志によるコントロールが失われ、通常では考えられない不思議な症状を起こします。例えば、最近のつらい出来事の記憶が部分的に失われたり、体に病気がないにもかかわらず、ある日突然、体の一部が動かなくなったり、知覚が麻痺したりすることがあります。それらの症状を、本人はまったく不安に思っていません。
ある考えが強く迫ってきて、忘れ去ろうとしてもしつこくつきまとい、その考えを消すために、自分でもばかばかしいと思いながら、一定の行動を繰り返します(強迫行為)。例えば、執拗に手を洗ったり、入浴したり、縁起等を何度も確認したりする行為が見られます。
特定の対象や状況に対して、異常なまでに恐怖感を感じます。がん恐怖症、不潔恐怖症、高所恐怖症、対人恐怖など、症状は人によってさまざまな形で現れます。このような状況や行為から生じる不安や緊張、体の症状で、社会生活に支障が出るようになります。
(例)広場恐怖:特定の状況や対象によって強い不安が引き起こされます。例えば、広場のような人が多くいる空間、町中の雑踏、電車やバス等の乗り物など、種々の空間に対して恐怖を感じます。
(例)社会恐怖:他人から注目され、批判されたり恥ずかしい思いをするのではないか(対人恐怖)というような恐怖から起こります。赤面恐怖、表情恐怖、視線恐怖などのほか、へびやクモ、地震や雷、暗闇、閉所、血液、けがの目撃など、特定の対象に対する恐怖もあります。
不安や恐怖など一般的な神経質症状とともに、憂うつな気分やこころが晴れないなどの軽いうつ状態が続きます。最近ではうつ病との違いを、うつの程度と持続期間によって区分され、抑うつ神経症は、2年以上に及ぶ慢性の軽うつ状態を示す症状をいいます。本来のうつ病の患者に比べ、一般的に妄想をもつことは少ない反面、神経質的な性格から心理的な葛藤が生じやすい傾向を持ち合わせている場合が多いです。
病気への心配が異常なほど抜けない状態になります。心配性ともいわれ、ちょっとした体の変調を気にして、医師に不調を執拗に訴え、医学書を読みあさったりします。
誰にでも起こり得る病気ですから、一人で悩まず、専門家に相談してみましょう。それが治療の第一歩です。相談する相手は、保健所の精神保健相談員や精神保健センターが手近です。人に会いたくない、出向くのがおっくうという人は、「いのちの電話」など、電話相談のシステムを利用するのもいいでしょう。また、同じ悩みを持つ人たちやその病気を克服した人たちが集まって開く会合などに参加してみるのも手です。
少し勇気が出てきたら、精神科医や心療内科の専門医を訪ねてみましょう。症状が軽い場合は、カウンセラーを紹介してくれることもあります。治療が必要な場合は、精神療法と薬物療法が行われます。薬物療法では、タイプによっては抗不安薬や抗うつ薬が効果を発揮することもあります。