パニック障害(その2) | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」

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パニック障害について(その2)

診断

パニック発作が繰り返し起きることを必須とし、発作後1か月以上、次の発作やその結果、発作によって自制心を失うのではないか、心臓発作を起こすのではないか、気が変になるのではないかという心配の持続、あるいは発作に関連した行動の大きな変化といった2項目のうちの1つ以上を満たすことが求められています。その前提として、身体疾患や薬物・薬剤因子による直接的な生理学的作用によらないことや、ほかの精神疾患で説明できないことが必要とされています。

客観的に症状を説明できない胸痛や動悸などで頻回に医療機関を受診する患者に、パニック障害を疑う必要があります。その際、「この半年の間に、突然の恐怖や不安や大きな心配の感情に襲われたことはありますか?」「この半年の間に、理由もなく心臓の鼓動が激しくなったり、気が遠くなるように感じたり、息ができなくなる発作がありましたか?」といった2つの質問によるスクリーニング法があります。特異度は低いが感度は高いため、簡易な検査法として適しています。なお、パニック障害は女性が男性の2倍で、好発年齢は10代後半および30代半ばです。

治療法

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第1選択となっています。数々のランダム化臨床試験(RCT)から効果面での差は小さいことが明らかにされており、それよりも安全面から、このように治療選択の優先順位が変化しました。ベンゾジアゼピン系は依存、乱用、そのものの副作用、中止時の急速な再発といった不利な点が多く、とくに薬物依存者、人格障害、慢性疼痛の病歴のある患者には投与を避けるべきです。三環系抗うつ薬は抗コリン作用が強く、心毒性のために過量服薬時の致死率が比較的高いです。

SSRIは投与初期に消化器症状を中心とした副作用が出現しやすいです。パニック障害の患者は副作用に非常に警戒的なことが多いため、少量から開始して漸増します。治療の第一目標は、パニック発作が出現しなくなることです。発作頻度の減少といった反応の水準の場合、回避している社会活動に実際には戻れないことが多いからです。このために、最初のSSRIの反応が不良であれば別のSSRIを試み、それでもだめなら別系統を試みるといったアルゴリズムが一般的であるが、明確な根拠はないです。症状改善後、恐怖に感じていた状況に直面させて社会活動への自信を持たせます。薬物療法が奏効した場合、その後の治療期間に関する明瞭な根拠はないが、少なくとも1年は継続し、その後に漸減中止の手順を踏むことが推奨されています。しかし、服薬中止後2年以内に1/3は再発するといったデータがあり、経過観察の必要性があるといわれています。

ベンゾジアゼピン系は効果出現の早さから、初期にSSRIと併用する場合も少なくないが、RCTでは3週より後はベンゾジアゼピン系を併用した群としない群で有意差は見いだされていないです。ベンゾジアゼピン系を数か月以上連用した場合、離脱症状として不安、易刺激性、頭痛、知覚異常、不眠、呼吸・循環症状などが高率に出現するため、その併用は慎重であるべきと思われます。ただし、恐怖刺激に直面する状況に備えて頓用でごく低頻度に使用することは、通常問題ないです。

もう一系統の抗うつ薬であるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のパニック障害に対する有効性に関しては、依然、限定的なデータにとどまります。 非薬物療法として、認知行動療法の有効性も実証されています。うつや広場恐怖を併存しないパニック障害患者に対して、認知行動療法は三環系抗うつ薬であるイミプラミンと同等に有効であったことが大規模なRCTで報告されています。このため、近年のさまざまなガイドラインでは、認知行動療法は薬物療法と同等に推奨されています。しかし、それを実施するかどうかは、実施可能な環境にあるかどうかに左右されます。

経過と予後

寛解と再燃・再発を繰り返して経過することが多いです。ほとんどの患者は生涯のうち一つ以上のほかの精神疾患を合併します。代表的なものとして、大うつ病、全般性不安障害、広場恐怖、外傷後ストレス障害、双極性障害、アルコール乱用があげられます。とくに大うつ病、広場恐怖、人格障害の併存は、症状の持続的な経過を予測させます。自殺リスクとの関連について一致した見解は得られていないが、大うつ病の併存がある場合にリスクが高くなるようです。

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