ホーム > ブログ > 心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(その8)
2020年02月04日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科(メンタルヘルス科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス」の8回目です。引き続き、心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖職場のメンタルヘルス概観〗(Ⅶ)
~職場のメンタルヘルスの概観と法令/メンタルヘルス指針⑦~
◎国によるメンタルヘルスマネジメントⓕ
■ストレスチェックと産業医のかかわり
ⅰ.ストレスチェック制度におけるメンタルヘルス科専門医(精神科医・心療内科医)の役割
⇒ストレスチェック制度においてメンタルヘルス科専門医師(精神科医師・心療内科医師)は、ストレスチェック実施者、メンタルヘルス科面接指導、一般メンタルヘルス相談の3つの場面で関与します。このストレスチェック制度における3つの役割の中で、ストレスチェック実施者の場合はメンタルヘルス専門医(心療内科医・精神科医)とだけ記され、唯一、一般メンタルヘルス相談のみに産業医とされており、メンタルヘルス科面接指導についてはメンタルヘルス専門医師(心療内科医師・精神科医師)や産業医、地域産業保健センターなどとなっています。産業医は医師でありストレスチェック制度におけるすべての役割を果たすことができるか、医師としてのかかわりと、産業医としてのかかわりとの違いを理解してメンタルヘルス対応する必要があります。
ⅱ.ストレスチェック実施者と産業医
⇒事業者はメンタルヘルス科医、保健師などメンタルヘルススタッフ、ストレスチェック検査を行うために必要なメンタルヘルス医療知識についてのメンタルヘルス研修であって厚生労働大臣が定めるものを修了した看護師または精神保健福祉士などメンタルヘルス職によって心理的なストレスの程度を把握するためのストレスチェック検査を行うことが、安衛法、安衛則によって定められています。すなわち、ストレスチェックの実施者になり得るのは、メンタルヘルス科医師を含む4つの職種となります。このストレスチェック実施者の役割を産業医が担う必要があるか否かについては、安衛則上は産業医がストレスチェック実施者として直接従事することまでは、求めていないとしているものの、ストレスチェックは当該事業場の産業医などが実施することが望ましい、としており、実務上の混乱が生じる場合があります。
ⅲ.メンタルヘルス科面接指導と産業医
⇒ストレスチェックの結果により、高ストレスとメンタルヘルス判定された勤労者には、ストレスチェック実施者からメンタルヘルス科専門医の主治医のメンタルヘルス科面接指導を受けるように推奨が行われます。この勤労者が事業者に申し出を行った場合、事業者はメンタルヘルス科専門医の主治医によるメンタルヘルス科面接指導を行わなければならないです。このメンタルヘルス科面接指導を行う医師について、前述のストレスチェック実施者と同様に、産業医に直接従事することまでを求めたものではないが、当該事業場の産業医がメンタルヘルス科面接指導を行うことが望ましい、とされています。メンタルヘルス科面接指導の実施は、ストレスチェックの実施と異なり、メンタルヘルス科面接指導の実施事務従事者や外部メンタルヘルス機関(メンタルヘルス科専門病院・メンタルクリニック)が介在せず、メンタルヘルス科専門医の主治医と勤労者の間で実施するものです。このため、メンタルヘルス科面接指導を行うメンタルヘルス科専門医の主治医は、自身で責任をもって実践することとなり、外部メンタルヘルス機関(メンタルヘルス科病院・メンタルクリニック等)が関与する場合のストレスチェック実施とは大きく異なるメンタルヘルス状況にあります。一方、メンタルヘルス科面接指導後に事業者宛にメンタルヘルス報告書・メンタルヘルス意見書を作成することになるが、特に就業に関するメンタルヘルス意見は、勤労者のメンタルヘルス確保とともに事業者が安全配慮義務を果たすうえで重要なメンタルヘルス内容となり、勤労者のメンタルヘルス状態や就業状態の把握に加え、事業場における職場環境の実態や就業規則など職場のメンタルヘルス制度との整合も図る必要があります。さらに、産業医の役割として、勤労者の就業に関するメンタルヘルス意見を述べることは重要かつ職場のメンタルヘルス専門的事項であり、これらの観点から考えると、産業医がメンタルヘルス科面接指導を担当することが望ましいと考えられます。
ⅳ.一般メンタルヘルス相談と産業医
⇒一般メンタルヘルス相談とは、産業医、保健師等のメンタルヘルス職が通常の産業保健活動などメンタルヘルス活動の中でさまざまなメンタルヘルス相談を受けているが、そのメンタルヘルス相談対応の一環としてストレスチェックの結果に関するメンタルヘルス相談を受けつけるものです。この一般メンタルヘルス相談は、メンタルヘルス科面接指導の対象とはならない高ストレスとメンタルヘルス判定されなかった勤労者も対象として、広くメンタルヘルス相談を受けつけることが想定されます。また、高ストレスとメンタルヘルス判定された勤労者も、メンタルヘルス科面接指導の申し出をしない場合の受け皿として、一般メンタルヘルス相談の役割は重要です。
なお、一般メンタルヘルス相談については、必ずしも産業医が関与しなければならないわけではなく、まず、看護職やカウンセラーなどの心理職によるメンタルヘルス職がメンタルヘルス対応し、その後必要に応じてメンタルヘルス科専門医の主治医によるメンタルヘルス面談を行うこととすることも可能です。
高ストレス者が一般メンタルヘルス相談に来室し、メンタルヘルス面談結果で就業配慮が必要な場合に、本人の了解を得てメンタルヘルス科面接指導の申し出手続きを経て、メンタルヘルス科面接指導を実施する方法もあるが、一般メンタルヘルス相談の結果から産業医が事業者へメンタルヘルス意見書を提出し、就業配慮に関するメンタルヘルス意見を述べるほうが実務的です。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。