ホーム > ブログ > 心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(その2)
2019年12月14日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科(メンタルヘルス科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(勤労者の心療内科的健康)」の2回目です。引き続き、心療内科医の役割と勤労者のメンタルヘルス(心療内科的健康)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖職場のメンタルヘルス概観(職場の心療内科的健康概観)〗(Ⅰ)
~職場のメンタルヘルスの概観と法令(職場の心療内科的健康の概観と法令)/メンタルヘルス指針(心療内科的健康指針)①~
わが国における近年の労働を取り巻く社会、経済環境の急激な変化は、それぞれが複雑にわが国の勤労者の働き方と労働関連のメンタルヘルス問題(心療内科的健康問題)に影響を与えています。職場におけるメンタルヘルスの問題(職場における心療内科的健康の問題)は、こういった労働環境の変化が大きく影響されていると考えられています。メンタルヘルス問題の増加(心療内科的健康問題の増加)やこのメンタルヘルス問題の増加に伴って発生(心療内科的健康問題の増加に伴って発生)するメンタルヘルス課題(心療内科的健康課題)、また、新たに認識されるようになったメンタルヘルス不調(心療内科的健康不調)におけるメンタルヘルス要因(心療内科的健康要因)となる心理的ストレスにメンタルヘルス対応(心療内科的健康対応)して、国は、種々のメンタルヘルス対策(種々の心療内科的健康対策)を打ち出してきました。ここでは、わが国で職場のメンタルヘルス(職場の心療内科的健康)が大きなメンタルヘルス問題(大きな心療内科的健康問題)になってきている背景とわが国のメンタルヘルスマネジメント(心療内科的健康マネジメント)について記します。
◎わが国で職場のメンタルヘルス(わが国で職場の心療内科的健康)が大きなメンタルヘルス問題になってきている背景(大きな心療内科的健康問題になってきている背景)
1.産業保健におけるメンタルヘルス(産業保健における心療内科的健康)とストレスの現状
⇒厚生労働省が実施している2016(平成28)年メンタルヘルス調査(心療内科的健康調査)(メンタルヘルス実態調査(心療内科的健康実態調査))では、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある者の割合が59.5%となっています。そのストレス内容は、「仕事の質・量」が53.8%と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が38.5%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が30.5%となっています。長時間労働、技術革新、経済の動向など、わが国の労働を取り巻く環境の急速な変化(表1)は、これらの大きなストレス要因となっていることがうかがわれます。加えて、いじめやハラスメントを含む職場の人間関係によるストレスは、職場内にとどまらず、顧客・窓口対応などの対人サービス業等で高くなっており、メンタルヘルス対策(心療内科的健康対策)の大きなメンタルヘルス課題(大きな心療内科的健康課題)になっています。
◇表1 わが国の労働を取り巻く環境の変化に関するキーワード
『・産業構造の変化
・成果主義の導入
・長時間労働(過重労働)
・経済の動向(特に不況)と雇用不安
・非正規労働人口の増加
・急速に進む技術革新とIT化(インターネット、携帯端末の普及)
・グローバリゼーション、企業の海外進出
・仕事の仕方や組織形態の変化(指示命令系統の複雑化)
・価値観の多様化(ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ・マネジメント)』
2.過労死等の労災認定
⇒過労死等防止対策推進法において、「過労死等」は、「業務における過重なストレスによる脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的ストレスによるメンタルヘルス障害を原因とする自殺(心療内科的健康障害を原因とする自殺)による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくはメンタルヘルス障害(心療内科的健康障害)をいう。」と定義されています。この過労死等、職業性ストレスに関連した労働災害補償請求や民事訴訟が増加しています。
1984(昭和59)年、メンタルヘルス障害例(心療内科的健康障害例)がわが国で初めて労災認定されました。以後、1980年代後半から過労死、自殺の増加が社会問題化しました。メンタルヘルス障害に関する(心療内科的健康障害に関する)労災補償の請求は過去15年間にほぼ6倍に増加し、2016(平成28)年には1,586件請求されています。うち未遂を含む自殺件数は198件でした。支給決定件数は498件で、うち未遂を含む自殺の件数は84件でした。支給決定の理由は、職場でのパワハラを含む「嫌がらせ、いじめ、暴行」が74人で最多でした。次いで、生死にかかわる病気やけが、極度の長時間労働など「特別な出来事」が67人、「仕事の内容や量の変化」が63人で、20歳代の若年層の労災認定が増加しています。
業務によって生じた脳・心臓疾患により労災認定される件数も高止まりしています。脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況は、請求件数は825件で、支給決定件数は260件、うち死亡件数は107件でした。
3.勤労者の自殺
⇒1998(平成10)年に急増し、一時年間9,000人を超えていた勤労者の自殺は、近年減少傾向があるものの、現在でも年間7,000人を数えています。1990年代後半の自殺率の増加は、男性の中高年者(40~50歳代)に特徴的でした。1990年代初頭の日本のバブル経済(バブル景気)破綻後、急速に後退した景気低迷に引き続いた1990年代後半に相次いだ大手金融機関の倒産(金融危機)などの関連が考察されています。勤務的なメンタルヘルス問題(勤務的な心療内科的健康問題)を原因・動機の1つとする自殺者割合の推移をみると、20歳代の自殺者の割合が増加傾向にあり、自殺に寄与するストレス要因が、経済的なメンタルヘルス問題(経済的な心療内科的健康問題)から長時間労働やいじめなど質的に変化している可能性がうかがわれます。
4.勤労者のメンタルヘルス不調(勤労者の心療内科的健康不調)による経済的影響
⇒過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業(心療内科的健康不調により連続1か月以上休業)した勤労者の割合は0.4%、退職した勤労者の割合は0.2%となっています。
自殺やメンタルヘルス不調がもたらす経済的損失(心療内科的健康不調がもたらす経済的損失)は大きいです。自殺やうつ病などメンタルヘルス疾患(心療内科的健康疾患)がなかったと仮定すると、経済利益は単年で約2兆7,000億円(うつ病などメンタルヘルス疾患が関与(心療内科的健康疾患が関与)するメンタルヘルス状況(心療内科的健康状況)のみに限ると7,754億円)と推計され、2010(平成22)年でのGDP引き上げ効果は約1兆7,000億円であったと試算されています。
メンタルヘルス不調が勤労者の生産性に与える影響(心療内科的健康不調が勤労者の生産性に与える影響)も大きいです。日本における大うつ病などメンタルヘルス疾患の総コスト(心療内科的健康疾患の総コスト)1兆2,900億円(2008(平成20)年)のうち、メンタルヘルス科入院(心療内科入院)やメンタルクリニック(心療内科クリニック)通院、自殺などのコストを除いた労働に関連するコストは、そのうちの6割以上を占め、勤労者が遅刻・早退・欠勤を繰り返すメンタルヘルス状態であるアブセンティイズム(Absenteeism)(欠勤を繰り返す心療内科的健康状態であるアブセンティイズム(Absenteeism))のみならず、出勤はしているものの、メンタルヘルス問題によってパフォーマンスの制限(心療内科的健康問題によってパフォーマンスの制限)や生産性が低下しているメンタルヘルス状態であるプレゼンティイズム(Presenteeism)(生産性が低下している心療内科的健康状態であるプレゼンティイズム(Presenteeism))の影響が大きいことが示されています。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。