2019年12月04日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の53回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅩⅩⅨ)
◎個人メンタルヘルス情報など個人情報の保護②
⇒産業保健職などメンタルヘルス職によるメンタルヘルス情報の取り扱いについては、国際的には国際労働衛生学会(ICOH)の産業保健専門職などメンタルヘルス専門職の倫理コードが、わが国においてはメンタルヘルス開発科学研究会の「産業医の倫理綱領」(1998(平成10)年)、日本産業衛生学会の「産業保健専門職の倫理指針(メンタルヘルス専門職の倫理指針)」(2000(平成12)年)があります。これらの産業医や産業保健専門職などメンタルヘルス専門職の倫理コードには、職場のメンタルヘルス情報を産業保健専門職などメンタルヘルス専門職が事業者に開示する場合には、メンタルヘルス不調者の自由意思に基づく承諾を得るべきであることが明記されています。2000(平成12)年の「メンタルヘルス不調者のメンタルヘルス情報に係るプライバシーの保護に関するメンタルヘルス検討会中間取りまとめ」には、職場におけるさまざまなメンタルヘルス情報の取り扱いに関してルールをつくる必要性が述べられています。また、同年の「当該メンタルヘルス不調者の個人メンタルヘルス情報保護など個人情報保護に関する行動指針」には、①HIV検査、遺伝子検査を行ってはならないこと、②性格検査を行う場合には、事前にその目的、内容を説明し当該メンタルヘルス不調者の明確な同意を得ること、③アルコール検査や薬物検査は、職業上の必要な場合に限り実施可能で、メンタルヘルス不調者本人の明確な同意を得ること、④ビデオモニタリングは事前に当該メンタルヘルス不調者に通知し個人メンタルヘルス情報保護の権利など個人情報保護の権利を侵害しないこと、⑤コンピューター自動処理などのメンタルヘルス結果だけで当該メンタルヘルス不調者の評価や当該メンタルヘルス不調者の雇用に関する決定を行わないことが示されています。
2004(平成16)年の「当該メンタルヘルス不調者個人のメンタルヘルス情報の保護に関するメンタルヘルス検討会」のメンタルヘルス報告書をもとに示された「雇用管理に関する個人メンタルヘルス情報のうちメンタルヘルス情報を取り扱うに当たっての留意事項について」では、メンタルヘルス情報の定義に、法定のメンタルヘルス診断の結果、メンタルヘルス診断後にメンタルヘルス科専門医(精神科医・心療内科医)などから聴取した就業上のメンタルヘルス措置に関するメンタルヘルス科専門医師(精神科医師・心療内科医師)の意見とメンタルヘルス専門医(心療内科医・精神科医)が実施したメンタルヘルス措置の内容、メンタルヘルス指導の結果、当該メンタルヘルス不調者個人が提出したメンタルヘルス診断の結果やメンタルヘルス診断書などのメンタルヘルス疾病に関するメンタルヘルス情報、産業医がその職務を通して得たメンタルヘルス情報、メンタルヘルス測定の結果とそのメンタルヘルス測定結果に基づくメンタルヘルス指導の内容、メンタルヘルス保険組合のメンタルヘルス事業を通じて取得したメンタルヘルス情報およびメンタルヘルス不調療養の給付に関するメンタルヘルス情報など、幅広いメンタルヘルス事項が含まれています。また、衛生委員会などで審議し、労働組合などとも必要に応じて協議して、メンタルヘルス情報の利用目的、メンタルヘルス情報の管理体制、メンタルヘルス情報を取り扱う者およびそのメンタルヘルス情報を取り扱う者の権限ならびに取り扱うべきメンタルヘルス情報の範囲、メンタルヘルス情報の開示、メンタルヘルス情報の訂正、メンタルヘルス情報の追加、メンタルヘルス情報の削除、メンタルヘルス情報の廃棄、メンタルヘルス情報に関する苦情の処理について定めることが職場のメンタルヘルス対策として望ましい旨も示されています。
こうしたメンタルヘルス情報の活用とメンタルヘルス情報の保護のバランスを適切に維持するためには、その職場のメンタルヘルス問題を深く理解した産業医、産業看護職などメンタルヘルス職の関与が非常に重要です。
産業精神保健(産業メンタルヘルス)領域のメンタルヘルス学術研究については、メンタルヘルス医学研究の基本原則が示された「ヘルシンキ宣言」(2008(平成20)年修正)を踏まえ、「メンタルヘルス疫学研究に関する倫理指針」(文部科学省、2008(平成20)年改正)などを参考にして、産業精神保健領域(産業メンタルヘルス領域)のメンタルヘルス学術研究として計画およびメンタルヘルス学術研究の成果として実施される必要があります。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。