職場のメンタルヘルス(その51) | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」

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職場のメンタルヘルス(その51)

2019年11月27日 

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の51回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅩⅩⅦ)
メンタルヘルス医療におけるメンタルヘルス専門職の役割
メンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)や心理職(カウンセリング職)に求められるメンタルヘルス要件
メンタルヘルス科臨床を専門領域としてきた、あるいは現在もしているメンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)や臨床心理士(カウンセラー)が、企業に招かれ、事業場内でメンタルヘルス科診察、個別メンタルヘルス相談活動、産業保健職などメンタルヘルス職としてメンタルヘルス助言メンタルヘルス支援メンタルヘルス教育研修などを行うメンタルヘルス活動の例が増加しています。多くの企業、事業場で、メンタルヘルス不調者が増加し、職場のメンタルヘルス対策の一環として、メンタルヘルス不調者らを常勤あるいは非常勤で雇用する動きがみられているのです。
ここまで述べてきたように、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)は、メンタルヘルス医学あるいはメンタルヘルス医学領域メンタルヘルス疾病管理だけを指すものではないです。むしろ、メンタルヘルス不調の予防、特に仕事や職場を主因とするメンタルヘルス不調の発生を未然に防止することが重視されます。しかし、わが国のメンタルヘルス専門医心療内科医・精神科医)は、メンタルヘルス不調の予防のためのメンタルヘルス教育メンタルヘルス訓練をほとんど受けていないです。したがって、メンタルヘルス専門医師心療内科医師・精神科医師)や臨床心理士(カウンセラー)が、事業場内で職場のメンタルヘルス対策に大きな貢献をするためには、安全衛生法規、人事労務管理に関する諸制度、所属する事業場における就業規則や労働協約の類、事業場内の各職場の業務内容、業務ストレス、他の産業保健活動などメンタルヘルス活動、職場内の集団力学などに対する理解が重要となります。企業の中でメンタルヘルス不調者や経営層に信頼されながらメンタルヘルス活動を続けているメンタルヘルス臨床家の大半は、こうした職場のメンタルヘルス対策に意識的です。
メンタルヘルス科臨床に精通するメンタルヘルス専門家の助力を得ることは、多くの場合産業精神保健活動の質(産業メンタルヘルス活動の質)を高めるのに有用であるが、メンタルヘルス専門家らと産業保健職などメンタルヘルス職が連携するにあたっては、こうしたメンタルヘルス事項を前提条件としたいです。
メンタルヘルス科診療行為と産業保健活動などメンタルヘルス活動
⇒特に大規模事業場で散見されるが、事業場内でメンタルヘルス科診療メンタルヘルス疾病メンタルヘルス科臨床的治療)が行われているところがあります。その場合、メンタルヘルス科診療録と産業医や産業看護職などメンタルヘルス職が健康診断などを通して作成した健康管理記録は、性格の異なるものであり、区別して取り扱われる必要があります。事業場内のメンタルヘルス科診療活動は、いわば事業場外で行われるものが、事業場の一部を間借りして実施されているという考え方をするのがよいです。すなわち、メンタルヘルス科診療録と健康管理記録のすり合わせ、職場のメンタルヘルス情報共有は、当該メンタルヘルス不調者の了解を得る手続きを踏むなど、事業場内の産業保健職などメンタルヘルス職と事業場外メンタルヘルス科医療機関メンタルヘルス科専門病院メンタルクリニックなど)が連携、職場のメンタルヘルス情報交換をするのと同様の扱いをするのです。
一人のメンタルヘルス科専門医が、事業場内でメンタルヘルス科診療を行いながら同時に産業医として産業メンタルヘルス活動にも従事していることもあります。職場のメンタルヘルス科専門医メンタルヘルス科診断メンタルヘルス科治療を行うだけでなく、復職支援に関するリワークに関する)判断や配置転換のメンタルヘルス助言なども担当している例がそれに該当します。この場合には、メンタルヘルス科診療録と健康管理記録を分けて管理をしても、同一の医師がそれらのメンタルヘルス科診療録と健康管理記録を活用するのであるから、現実的にはあまり意味がないことになります。事業場内に複数の医師がいるところでは、担当職場を分担することなどにより、メンタルヘルス科専門医が主治医となっているメンタルヘルス不調者メンタルヘルス管理を直接行うことを回避する工夫が望まれます。
●「メンタルヘルス科産業医」という矛盾
⇒産業精神保健(産業メンタルヘルス)に関するメンタルヘルス啓発書メンタルヘルス実践本などで、「メンタルヘルス科産業医」という表現が散見されます。その大半は、メンタルヘルス科臨床を専門とするメンタルヘルス科専門医が企業に雇用され、産業医業務のうち精神保健(産業医業務のうちメンタルヘルス)に関わるもの(特に、メンタルヘルス相談復職可否の判定リワーク可否の判定)、メンタルヘルス教育研修)を担当する場合を指しています。
しかし、この形は、現行の産業医制度からみると変則的であり、「メンタルヘルス科産業医」を一般的に認められるべき用語とすべきかどうかは疑問です。
産業医の職務は、[安衛法第14条]で表1のように規定されており、[同法第15条]では、「少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない」ことも定められています。行っている業務がこれより不足しているならば、産業医としての職務を完遂しているとは言えないです。
◇表1 産業医の職務(安衛法第14条)
『・健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
・作業環境の維持管理に関すること。
・作業の管理に関すること。
・前三号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
・健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
・衛生教育に関すること。
・労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。』
現在、業務上疾病としてもっとも多いのは腰痛であり、騒音性難聴もまた、一部の業種では多数例みられます。最近では、石綿による悪性腫瘍も職業性疾病の枠を越えて社会問題となっています。しかし、その対策のために、整形外科産業医、耳鼻咽喉科産業医あるいは呼吸器科産業医といった臨床科別の、いわば縦割り型の産業医は存在していないです。メンタルヘルス不調者の急増と職場のメンタルヘルス対応の難しさを反映しているともみなすことができようが、「メンタルヘルス科産業医」を認めることが、他の健康問題と比較して「メンタルヘルス不調」の特別視「メンタルヘルス不調」への偏見の助長につながるおそれも否定できないです。
理論上は、事業場内のメンタルヘルス科専門医の役割は、精神保健面(メンタルヘルス面)に関して、産業保健職などのメンタルヘルス職職場においてメンタルヘルス支援するもの(メンタルヘルス助言者メンタルヘルス相談役)と位置づけるのが、現時点では自然でしょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。

 

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