職場のメンタルヘルス(その41) | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」

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職場のメンタルヘルス(その41)

2019年10月29日 

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の41回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅩⅦ)
職場におけるメンタルヘルス不調は職務遂行能力へどのように影響するか?①~
◎アブセンティイズム(Absenteeism)とプレゼンティイズム(Presenteeism)
メンタルヘルス不調による労働生産性の低下は、アブセンティイズムとプレゼンティイズムの2つに分けられます。アブセンティイズムとは「休業しているメンタルヘルス状態」であり、プレゼンティイズムとは「出勤しているメンタルヘルス不調者メンタルヘルス問題による職務遂行能力の低下であり、主観的にメンタルヘルス測定が可能なもの」と定義されます。つまり、メンタルヘルス不調など何らかの理由で、メンタルヘルス不調者遅刻・早退・欠勤など目に見える勤怠不良の形を繰り返すメンタルヘルス状態をアブセンティイズム、また、出社はしているものの、何らかのメンタルヘルス不調のせいで頭や体が思うように働かない、モチベーションが上がらないなど、本来期待されるパフォーマンス(職務遂行能力)が発揮できていないメンタルヘルス状態をプレゼンティイズムと呼びます。
アブセンティイズムの場合、休業日の労働生産性は全くないが、アブセンティイズムはプレゼンティイズムに比較して原則的に長期化しないです。無断欠勤か、メンタルヘルス不調による休業かにより大きく異なるが、メンタルヘルス不調により休業できる期間の上限は就業規則により明確化されており、労働生産性が全くないメンタルヘルス状態のまま、社員としての資格を長期間にわたり維持することはできないからです。
一方、プレゼンティイズムの場合、アブセンティイズムの期間を挟みながら長期化する場合が、それほどまれではないです。その理由は、職務遂行能力低下のメンタルヘルス状態を定量化するのは困難であり、その結果、就業規則上、職務遂行能力低下のメンタルヘルス状態を定義づけることが難しく、プレゼンティイズムを呈しつつ働き続ける期間の上限が明確化されにくいためです。
したがって、産業保健業務など産業メンタルヘルス業務に携わる産業メンタルヘルス医療者が最もメンタルヘルス対応に苦慮するのは、プレゼンティイズムに関してでしょう。「出勤はなんとかできるが、仕事はほとんどできない。ストレスの高い業務に従事させることにより、メンタルヘルス状態悪化のおそれがあり、また、本来なら該当するメンタルヘルス不調者の行うべき業務のしわ寄せがほかの社員に及び、士気の低下やメンタルヘルス障害の招来が懸念される」といったメンタルヘルス状況において、どのようにメンタルヘルス的介入するのが適切か、産業保健担当者など産業メンタルヘルス担当者はしばしば頭を悩ませることになります。
顕在化したメンタルヘルス問題背後にある大きなメンタルヘルス問題
⇒実は職場におけるメンタルヘルス問題は、単にメンタルヘルス不調による休職者だけのメンタルヘルス問題ではありません。メンタルヘルス不調による休職者を氷山にたとえると、そのメンタルヘルス問題の背景(予備軍)には、氷山の水中にある氷の部分に当たる、休職してはいないものの欠勤がちとなっているメンタルヘルス不調者(アブセンティイズム)や、勤務は続けているもののモチベーションの低下などにより労働生産性が低下しているメンタルヘルス不調者(プレゼンティイズム)など、本質的に解決していかなければならない、より大きなメンタルヘルス問題が潜んでいるのです。
具体的に、アメリカの会社でメンタルヘルス関連コストに関するメンタルヘルス調査を行ったところ、もちろん日本とアメリカのメンタルヘルス医療制度は異なるが、このメンタルヘルス調査結果から、従業員のメンタルヘルスに関連した企業の総コストのうち、医療費や薬剤費といった直接費用は全体の4分の1にすぎず、残りのほとんどは、アブセンティイズムやプレゼンティイズムといったメンタルヘルス状態による労働損失が占めているということがわかりました。
また、他のメンタルヘルス調査においても、「企業経営における最大の労働損失はプレゼンティイズムによるメンタルヘルス状態である」といった指摘もなされており、メンタルヘルス不調による休職者(氷山)のメンタルヘルス問題以上に企業経営において看過できないメンタルヘルス問題となってきています。よく、「メンタルヘルス対策にお金をかけるのは無駄」、「メンタルヘルス管理は非生産部門で、企業にお金を落としてくれるわけではない」などという企業の労務関係者がいるが、これまでの話で、メンタルヘルス対策を怠ると企業や組織に大きな損失が発生するおそれがあるということがご理解いただけたのではないでしょうか。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。

 

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