2019年10月24日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の40回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅩⅥ)
~職場のメンタルヘルス・スクリーニングにおけるメンタルヘルス課題②~
◎本格的なメンタルヘルス・スクリーニング導入のための職場のメンタルヘルス環境整備
⇒このメンタルヘルス問題については、日本産業衛生学会の産業精神衛生研究会(産業メンタルヘルス研究会)におけるメンタルヘルス報告書がメンタルヘルス・スクリーニング導入について一定の見解を示しています。同産業メンタルヘルス研究会でのメンタルヘルス報告書に盛り込まれた、職場のメンタルヘルス・スクリーニング導入に際しての必要条件を以下に示します。
『①心の健康(メンタルヘルス不調を含む)について理解のある職場のメンタルヘルス風土を醸成するためのメンタルヘルス啓発(メンタルヘルス教育・メンタルヘルス研修など)が十分に行われていること
②衛生委員会でのメンタルヘルス審議を経て、事業場全体でのメンタルヘルス・スクリーニングの導入について合意を得ること
③就業面の配慮を含むメンタルヘルス・スクリーニング導入後の事後メンタルヘルス措置の進め方をあらかじめ明確にしておくこと
④メンタルヘルス情報の取り扱い方法を決め、文書化しておくこと
⑤精神面の健康状態(メンタルヘルス状態)を適切にメンタルヘルス評価できるメンタルヘルス科専門医(精神科医・心療内科医)によるメンタルヘルス二次検査が受けられる手配をしておくこと
⑥メンタルヘルス・スクリーニングへの回答を拒否するメンタルヘルス不調者に対して、メンタルヘルス・スクリーニングを強要してはならないこと
⑦メンタルヘルス・スクリーニングの有効性が確認できない場合のメンタルヘルス対応もメンタルヘルス科的に検討すること
⑧メンタルヘルス専門職が不在の事業場にも適用できる職場のメンタルヘルス・スクリーニング導入のためのガイドラインを作成すること
⑨職場のメンタルヘルス・スクリーニングが、産業医の関与する包括的なメンタルヘルス対策の一部であると位置づけられること』
メンタルヘルス不調のメンタルヘルス・スクリーニングに当たっては、職場におけるメンタルヘルス・スクリーニング導入後の事後メンタルヘルス措置を適切に実施できる職場のメンタルヘルス体制づくりが行われ、メンタルヘルス関係者のメンタルヘルス・スクリーニングでの役割分担が明確になっている必要があります。職場のメンタルヘルス関係者のメンタルヘルス・スクリーニングにおける役割分担が不十分なメンタルヘルス状況でのメンタルヘルス・スクリーニング実施は、産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフに多大な時間と労力を要するメンタルヘルス・二次検査後に、さらに就業上のメンタルヘルス措置に関するメンタルヘルス対策を求めることになりかねず、その他の産業保健業務など産業メンタルヘルス業務に甚大な影響をもたらします。
メンタルヘルス・スクリーニングの結果は、職場のメンタルヘルス環境改善に活かすべきだが、わが国ではまだ確立されたメンタルヘルス・スクリーニング導入のためのガイドラインはないです。また、メンタルヘルス・スクリーニングを実施された回答者から「正直な」メンタルヘルス・スクリーニングへの回答が得られない場合には、メンタルヘルス・スクリーニングの結果の歪みが本来実施されるべき職場のメンタルヘルス環境改善とは乖離する危険性もあります。メンタルヘルス科診断やメンタルヘルス科面接指導など個人メンタルヘルス情報の守秘義務は言うまでもなく、メンタルヘルス・スクリーニングの結果の目的外使用も厳に禁じられなければならないです。メンタルヘルス・スクリーニングへの回答の歪み(虚偽)に関しては、メンタルヘルス・一次スクリーニング陰性者にも、一定の確率でランダムにメンタルヘルス・二次スクリーニングを行うなどのメンタルヘルス措置を講ずるなどのメンタルヘルス対策も考えられます。メンタルヘルス・一次スクリーニング陰性者にもメンタルヘルス・二次スクリーニングを行うことにより、「メンタルヘルス質問票にメンタルヘルス不調で該当回答すると、メンタルヘルス不調者扱いされてメンタルヘルス科面接を受けさせられる」という見方をある程度抑制できるかもしれないです。しかし、メンタルヘルス・一次スクリーニング陰性者へのメンタルヘルス・二次スクリーニング実施は一方で、数多い偽陽性者にさらにメンタルヘルス科面接対象者を上乗せすることになってしまいます。やはり、メンタルヘルス・リテラシーの普及と事後メンタルヘルス措置のための職場におけるメンタルヘルス体制を構築していくことが肝要であると考えられます。
メンタルヘルス不調者が増えているといわれる現在、メンタルヘルス・スクリーニングの導入は喫緊のメンタルヘルス課題です。ストレスチェック制度の導入は、そのメンタルヘルス対策の一つでもあります。しかし、メンタルヘルス問題に関していまだ偏見の根強い現状にあっては、すべてのメンタルヘルス不調者が不利益とならないような職場のメンタルヘルス体制づくりが必要不可欠であることを忘れてはならないです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。