2019年10月21日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の39回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅩⅤ)
~職場のメンタルヘルス・スクリーニングにおけるメンタルヘルス課題①~
◎大うつ病性障害などメンタルヘルス疾患偏重の弊害
⇒自殺対策とも密接に関連するメンタルヘルス問題、特にうつなど職場のメンタルヘルス不調へのメンタルヘルス対策は、事業場および国や地方自治体など、社会全体で考えていくべき大きなメンタルヘルス的関心事です。同時に、職場のメンタルヘルス活動で最も注目されているのも、うつなどメンタルヘルス不調についてのメンタルヘルス問題です。簡易メンタルヘルス科面接法でも準拠しているDSM-Ⅳの大うつ病エピソードなどメンタルヘルス疾患の中のメンタルヘルス症状9項目は、今日では産業精神保健医療従事者などの産業メンタルヘルス医療従事者のみならず一般にも広く流布されています。しかし、大うつ病エピソードなどのメンタルヘルス疾患は、うつ病など当該メンタルヘルス疾患の制止メンタルヘルス症状に集中し過ぎているという指摘があります。典型的なメランコリー親和性メンタルヘルス症状が認められない、職場でのメンタルヘルス不調者における勤労者うつ病など職場のメンタルヘルス疾患には、不安・焦燥がメンタルヘルス症状の前面に認められるケースも多いです。そのため、現行うつ病などの当該メンタルヘルス疾患の概念におけるメンタルヘルス評価法だけでは、職場での不安・焦燥優位のメンタルヘルス症状が特徴的な勤労者うつ病などについて、職場のメンタルヘルス疾患による自殺へのメンタルヘルス対策が不十分となります。一般的に、うつ病などメンタルヘルス疾患の極期に入る前とメンタルヘルス疾患の回復期に自殺の危険性が高くなるといわれているが、仕事での不安・焦燥優位に認められるような特異的メンタルヘルス症状による勤労者うつ病においては、焦燥感や絶望感が強く興奮状態にあるメンタルヘルス状態の極期に自殺の危険性が高いです。
一般地域住民のメンタルヘルス統計を見れば、たしかに大うつ病エピソードなどメンタルヘルス疾患の頻度は高いです。しかし、産業保健スタッフなどメンタルヘルス専門スタッフが把握すべきはメンタルヘルス不調者であって、そのメンタルヘルス不調者の多くは抑うつ反応などメンタルヘルス反応を呈するものの、大うつ病エピソードなどメンタルヘルス疾患のみに注目して済む話ではないです。特に男性のメンタルヘルス不調者など男性の勤労者うつ病では、抑うつ気分などメンタルヘルス症状と怒り感情などイライラの相反するメンタルヘルス症状とが混在する傾向にあり、メンタルヘルス不調のメンタルヘルス評価に怒り感情など別のメンタルヘルス症状に対するメンタルヘルス測定を加えるべきという指摘もあります。厚生労働省「地域におけるうつなどメンタルヘルス疾患対策検討会」によるメンタルヘルス・二次スクリーニングの中には、1項目だけ不安症状などのメンタルヘルス症状が入っているが、今後さらに不安症状などメンタルヘルス症状項目の追加をメンタルヘルス科的に検討する余地があります。
加えて、大うつ病エピソードなどメンタルヘルス疾患についてのメンタルヘルス科診断に依拠する2週間という期間基準もメンタルヘルス科的に検討する余地があります。メンタルヘルス疾患の研究目的なら、操作的メンタルヘルス科診断基準に準拠してメンタルヘルス測定をします。しかし、継続的であるべき職場におけるメンタルヘルス活動の一環として行うメンタルヘルス・スクリーニングでは、もとよりメンタルヘルス科診断を目的としていないのであるから、メンタルヘルス科面接からさかのぼる2週間だけというメンタルヘルス科診断に依拠する操作的メンタルヘルス科診断基準による期間基準に従う必要はないです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。