2019年10月19日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の38回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅩⅣ)
~メンタルヘルス科診断名ごとのメンタルヘルス対応のしかた③~
◎メンタルヘルス科診断名が「適応障害」などの軽度メンタルヘルス不調の場合
⇒適応障害など軽度メンタルヘルス不調とは、はっきりとしたストレスとなる出来事(ストレス因子)によって、通常想定される以上の抑うつや不安、軽度メンタルヘルス不調などのメンタルヘルス症状をきたし社会生活上に支障が生じることです。ただしこのメンタルヘルス症状はうつ病などメンタルヘルス疾患やその他のメンタルヘルス障害のメンタルヘルス科診断基準を満たすほど強いものではありません。また一般的にはストレス因子が終結すると半年以内にメンタルヘルス症状が治まるとされ、ストレス因子が続くとメンタルヘルス不調が慢性化することもあります。そのためストレス因子が取り除かれることが望ましいのですが、多くの場合にはメンタルヘルス不調の慢性化は避けられないか職場のメンタルヘルス状況の解決に時間のかかるメンタルヘルス問題であり、メンタルヘルス科治療はどのようにストレス因子と向き合えば良いかをカウンセリングで見出していくメンタルヘルス療法が中心となります。メンタルヘルス症状が強い場合には薬物療法も併用されます。
メンタルヘルス科専門医の主治医(精神科医・心療内科医)の作成したメンタルヘルス科休業診断書に書かれたメンタルヘルス科診断名が「適応障害」の場合、メンタルヘルス科専門医師の主治医(精神科医師・心療内科医師)は操作的メンタルヘルス科診断基準に基づいてメンタルヘルス科診断を下している可能性があります。メンタルヘルス疾患に至った原因として、純粋にハラスメントなど、誰にでも理解し得る耐えがたい環境的ストレスが原因として存在する場合もあれば、メンタルヘルス不調者本人の性格の偏りこそがメンタルヘルス問題であり環境的ストレスはそれほどないにもかかわらずメンタルヘルス症状を呈している場合でも、適応障害など軽度メンタルヘルス不調というようなメンタルヘルス科診断名のみがメンタルヘルス科休業診断書に記載されていることがあります。このメンタルヘルス科休業診断書を受け取った際、環境的ストレスが強いのか、メンタルヘルス不調者の性格的要因が強いのかを考えることが必要です。環境的ストレスが強い場合は、メンタルヘルス科医療的な介入よりも人事的な介入のほうが、職場のメンタルヘルス対策としてよりよい効果をもたらすことも多いです。一方で、メンタルヘルス不調者の性格的側面が強い場合、安易な人事異動は逆にメンタルヘルス症状の悪化を助長したり、周囲を困らせたりすることにもつながりかねないので、注意が必要です。
◎職場での適応障害など軽度メンタルヘルス不調からの復職がうまくいかない(リワークがうまくいかない)理由
⇒職場での適応障害などの軽度メンタルヘルス不調が原因で生じたメンタルヘルス症状はストレス因子にさらされたことによるメンタルヘルス反応だと考えられます。業務内容や量、人間関係など仕事がストレス因子であれば、仕事を休み職場から離れることでほとんどの場合メンタルヘルス症状は快方に向かいます。ですが、メンタルヘルス状態が回復したからといって同じ職場の環境に復職(同じ職場の環境にリワーク)すれば、また同じストレス因子にさらされ職場での適応障害など軽度メンタルヘルス不調を再発してしまいます。軽度メンタルヘルス不調の再発を繰り返すうちに当該メンタルヘルス不調者本人も復職への自信(リワークへの自信)をなくし不安が強まるとともに、周囲もまた当該メンタルヘルス不調者本人が休むことになるのではないかと復職の受け入れが困難(リワークの受け入れが困難)になってしまうのです。復職前(リワーク前)に重要な点は、当該メンタルヘルス不調者本人がストレス因子の存在する環境下でどのようにふるまえば良いのかを考えられるようになることです。「なぜメンタルヘルス不調者本人自身がメンタルヘルス状態を崩してしまったのか」、「今後同じようなメンタルヘルス状況にメンタルヘルス不調者本人自身が遭遇した場合にはどのようなメンタルヘルス対処が有効だろうか」など、ストレス因子とのこれまでの関わり方をメンタルヘルス不調者本人自身が振り返り、新しいストレス因子との関わり方を身につけることがメンタルヘルス不調の再発予防につながります。このメンタルヘルス不調者本人自身の振り返りに加えて、職場側のストレス因子を軽減できるような配慮がメンタルヘルス不調の再発予防の上では必要であり、メンタルヘルス不調者本人自身の振り返りと職場側の配慮のどちらが欠けても復職はうまくいかない(どちらが欠けてもリワークはうまくいかない)でしょう。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。