2019年10月16日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の37回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅩⅢ)
~メンタルヘルス科診断名ごとのメンタルヘルス対応のしかた②~
◎メンタルヘルス科診断名が「うつ病」などのメンタルヘルス疾患と「パーソナリティ障害」などのメンタルヘルス障害の併存診断による場合
⇒大うつ病性障害などメンタルヘルス疾患に併存してパーソナリティ障害などメンタルヘルス障害があるとメンタルヘルス科治療反応性が悪く、予後が不良であるとされています。また、メタ解析による結果でも、パーソナリティ障害などメンタルヘルス障害を併存する大うつ病性障害などメンタルヘルス疾患の場合、通常パーソナリティ障害などメンタルヘルス障害を併存しない大うつ病性障害などのメンタルヘルス疾患に比べて予後が悪く、そのオッズ比は2.18で有意に高いとされています。
うつ病などメンタルヘルス疾患に併存して診断されたメンタルヘルス障害の併存例としては境界性パーソナリティ障害が最もよく研究されているが、最近では現代型(新型)うつ病と自己愛性パーソナリティ障害などメンタルヘルス障害との関連が指摘されています。この境界性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害などのメンタルヘルス障害の両者については、メンタルヘルス病理構造上、抑うつ症状などメンタルヘルス症状が必発であり、境界性パーソナリティ障害などのメンタルヘルス障害においては見捨てられ不安により抑うつ症状などのメンタルヘルス症状が誘導され、また抑うつ状態などメンタルヘルス不調にならない自己愛性パーソナリティ障害はそもそもメンタルヘルス科医療機関を受診しないとの指摘もあります。こうしたメンタルヘルス科医療機関を受診しない傾向は職場のメンタルヘルスケアにおいて話題となることの多いディスチミア親和型うつ病などメンタルヘルス疾患にも共通した特徴が認められます。
パーソナリティ障害が併存するメンタルヘルス障害の併存例の場合でも、上記うつ病など併存されたメンタルヘルス疾患による抑うつ症状などメンタルヘルス症状に対して抗うつ薬が第一選択であることに変わりはないが、抗うつ薬だけでは効果が不十分であることが多く、特に衝動性に対しては気分安定薬や非定型抗精神病薬などが併用されることもあります。なお、メンタルヘルス不調者本人が責任を持って服薬管理ができない場合や衝動性の強い場合には、過量服薬の危険性に十分注意を払って処方することが必要です。また、パーソナリティ障害に対する治療などメンタルヘルス障害の治療はメンタルヘルス分析療法をはじめ、種々のメンタルヘルス科専門的なメンタルヘルス療法も並行して行われます。
メンタルヘルス疾患の併存例、特にうつ病などのメンタルヘルス疾患例にDSM-Ⅳ-TRのⅡ軸であるパーソナリティ障害などのメンタルヘルス障害が併存する場合の予後やメンタルヘルス対応などについて述べました。メンタルヘルス障害の併存例という概念はメンタルヘルス科診断学的あるいはメンタルヘルス科疫学的な興味だけではなく、メンタルヘルス科臨床の場面においてメンタルヘルス疾患の経過やメンタルヘルス疾患の予後を左右するメンタルヘルス科治療戦略を考慮する際には有用な概念です。なお、職場うつ病などのメンタルヘルス疾患と併存する場合では、統合失調症や認知症、発達障害などのメンタルヘルス障害も重要であるが、職場のメンタルヘルスケアにおいてメンタルヘルス対応を求められることは多くないと思われるためここでは触れなかったです。
◎当該メンタルヘルス科診断名が「神経症」など心因性のメンタルヘルス障害の場合
⇒メンタルヘルス科専門医の主治医(精神科医・心療内科医)の作成したメンタルヘルス科診断書に書かれたメンタルヘルス科診断名が「神経症」などの心因性メンタルヘルス障害の場合、メンタルヘルス科専門医師の主治医(精神科医師・心療内科医師)は従来からのメンタルヘルス障害のメンタルヘルス科診断に基づき、メンタルヘルス不調者の性格や周囲の環境に起因する心因性のメンタルヘルス障害であることを示していると推測できます。神経症など心因性のメンタルヘルス障害の概念は広く、不安を呈するもの、強迫症状などメンタルヘルス症状を呈するもの、原因の特定できない身体の疼痛を呈するもの(疼痛性障害)などが含まれ、そのメンタルヘルス症状はさまざまです。たとえば、ICD-10では「コードF4;神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」の中に、「F40;恐怖症性不安障害(社会不安障害など)」「F41;他の不安障害(パニック障害・全般性不安障害など)」「F42;強迫性障害」「F43;重度ストレス反応および適応障害」「F44;解離性(転換性)障害」「F45;身体表現性障害」「F48;ほかの神経症性障害」と分類されています。メンタルヘルス専門医の主治医(心療内科医・精神科医)の作成したメンタルヘルス科診断書を見た際に、これらのうちのいずれの心因性メンタルヘルス障害を示しているのかを考えることが必要であるし、メンタルヘルス的判断に苦慮する場合は、メンタルヘルス専門医師の主治医(心療内科医師・精神科医師)に確認をすることが必要です。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。