2019年09月21日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の29回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(ⅩⅤ)
~メンタルヘルス障害発症に関する要因①~
職場におけるメンタルヘルス対策として考える場合、まずは業務と関連のあるメンタルヘルス不調を中心にメンタルヘルス対応を考えることがよいです。企業には労働契約法の規定や安全配慮義務があるため、業務に付随して発生するケガやメンタルヘルス不調の予防に努める義務があり、業務と関連するメンタルヘルス不調へのメンタルヘルス対応は、法的責務とされます。そのため業務と関連するメンタルヘルス不調へのメンタルヘルス対応は、福利厚生的なメンタルヘルス不調者個人のメンタルヘルス疾患へのメンタルヘルス対策としてだけではなく、業務と直結したメンタルヘルス活動として展開され、優先度が高くなります。
職場は、目的を達成するための組織であり、個々の組織成員の仕事の遂行能力は組織能力を左右します。仕事の遂行能力低下の理由がメンタルヘルス障害の場合、そのメンタルヘルス障害を改善できれば、仕事の遂行能力も回復することが考えられます。現代の仕事では、筋肉労働は減少し、知的(創造する)・感情的(対人サービス)労働などメンタルヘルス活動による労働の占める割合が高くなっています。メンタルヘルス障害発症によって、そのようなメンタルヘルス活動能力の低下をもたらすことが多いです。そのためメンタルヘルス障害の場合は、よりメンタルヘルス活動による労働力の低下が大きくなります。組織目的の達成のためにも、職場におけるメンタルヘルス障害へのメンタルヘルス対応が不可欠となります。
職場に共通する業務と関連するメンタルヘルス不調の要因として過重労働があります。過重労働の指標の一つとして、長時間労働が取り上げられます。長時間労働などの過重労働とメンタルヘルス障害との関係は、メンタルヘルス疲労を中心とすると理解しやすいです。
◎職場におけるメンタルヘルス不調の要因としてメンタルヘルス疲労を中心に考える
⇒メンタルヘルスの疲労は、急性のメンタルヘルス疲労と慢性のメンタルヘルス疲労に分けられます。慢性のメンタルヘルス疲労とは、翌日まで持ち越したメンタルヘルス疲労のことです。前日までのメンタルヘルス疲労を残しながら当日も仕事を続け、その日のメンタルヘルス疲労もまた翌日に持ち越すようなメンタルヘルス状態になれば、徐々に持ち越されたメンタルヘルス疲労は蓄積していくことになります。この仕事での蓄積されたメンタルヘルス疲労(蓄積メンタルヘルス疲労)が、生体の許容範囲を超えた場合にメンタルヘルスの不調につながります。
疲労はまた、身体疲労とメンタルヘルスの疲労に分けられます。前述のとおり現代の仕事は、身体活動よりメンタルヘルス活動が中心となっています。そのため、脳により強いメンタルヘルス疲労が生じやすくなります。
脳のメンタルヘルス疲労では、2段階のメンタルヘルス反応が起きます。ある程度のレベルまでのメンタルヘルス疲労であれば、メンタルヘルス活動は低下します。メンタルヘルスの自覚症状としては、集中力が低下して、眠気を感じ、ボーっとします。そのメンタルヘルス疲労レベルの段階以上にメンタルヘルス疲労が蓄積すると、メンタルヘルス活動が過剰に亢進します。メンタルヘルスの自覚症状としては、集中力が低下し(注意が拡散して集中できないメンタルヘルス状態)、焦燥感が強くなり、不眠となります。このメンタルヘルス疲労レベルに至ると、休養することが生理的にも困難になり、メンタルヘルス疲労の蓄積がより進むことになります。このメンタルヘルス疲労がある限度を超えて蓄積し、メンタルヘルス活動が亢進したメンタルヘルス状態(神経過敏状態)がさまざまなメンタルヘルス不調の基点となります。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。