2019年09月07日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の22回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅷ)
~メンタルヘルス不調に関するアセスメントのポイント~
アセスメントassessmentとは直訳すると「評価」「査定」を意味します。ここでいうアセスメントは、必要かつ的確なメンタルヘルス情報を得てメンタルヘルスの問題を把握しメンタルヘルス評価することです。そのためには、メンタルヘルス不調者の立場に立ちつつも中立的なメンタルヘルス不調に関する視点を欠かさないことが重要です。職場は病院とは異なり、メンタルヘルス管理室にやって来た人が必ずしもメンタルヘルス不調者とは限らないです。明らかにメンタルヘルス科的に病的なメンタルヘルス状態に見えても、そのメンタルヘルス不調者が即「メンタルヘルス障害者」になるとは限らないし、明らかな疾病が存在しなくても言動から職場としてはメンタルヘルスの問題なのではないかと見なされるメンタルヘルス不調者もいます。そのような条件下で適切な職場のメンタルヘルス支援を行うためには、必要なメンタルヘルス情報をいかに集め、どうアセスメント(見立て)をしていくかにかかってきます。
では、メンタルヘルス科専門医(精神科医・心療内科医)、臨床心理士(カウンセラー)などのようなメンタルヘルス専門職とは違う人事労務担当者や上司では、よいアセスメントはできないのでしょうか。メンタルヘルス不調に関するアセスメントのポイントをおさえてメンタルヘルス不調者と面談することによって十分なメンタルヘルス情報を得られ、メンタルヘルス支援の端緒とすることができます。
◎「疾病性」と「事例性」に分けて考える
⇒職場でメンタルヘルス関連の問題が疑われる事例が発生した場合、対応する直属上司や同僚などはメンタルヘルス医学のメンタルヘルス科専門医師(精神科医師・心療内科医師)ではないため、メンタルヘルス専門家(心療内科医・精神科医)と同じようなアセスメントを行うのは困難です。そのように限られたメンタルヘルスに関する知識や職場でのメンタルヘルス経験の中で、メンタルヘルスの問題に対応していく際に重要な考え方は、職場でのメンタルヘルスの問題を「疾病性」と「事例性」とに分けて把握し検討していく方法です。
疾病性とは「幻聴が存在する」「被害妄想がある」「うつ病などメンタルヘルス疾患が疑われる」など、どんなメンタルヘルス症状があるか、そもそもメンタルヘルス疾患であるのかどうか、メンタルヘルス疾患であればメンタルヘルス疾患名は何か、メンタルヘルス疾患の重症度はどうか、メンタルヘルス科治療は必要かなどといったメンタルヘルス不調者のメンタルヘルス症状やメンタルヘルス疾患名に関することであり、心療内科医師・精神科医師などメンタルヘルス専門医師がメンタルヘルス的判断するところです。一方、事例性とは「普段のような元気さがなくふさぎこんでいる」「欠勤、遅刻、早退が多く勤怠が不良である」「以前と比べて仕事のミスが多くなっている」「すぐカッとなり周囲とのトラブルが多い」など、職場でメンタルヘルスの問題になっている度合いであり、周囲の人が気づく客観的事実です。
職場で何かメンタルヘルスの問題をキャッチしたら、とかく「うつ病などのメンタルヘルス疾患に違いない」「被害妄想が出ている」など疾病性に目が行きがちであるが、まずは事例性に着目してそれに関するメンタルヘルス情報を収集します。その上でメンタルヘルス科医療の必要性があるとメンタルヘルス的判断をしたらメンタルヘルス科受診につなぎ、疾病性を扱ってもらうことになります。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。