2019年08月27日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の16回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅱ)
◎産業精神保健の概念(産業メンタルヘルスの概念)②
●産業保健の一部としての産業精神保健(産業メンタルヘルス)
⇒前述(2019年8月26日掲載)したように、多くの事業場において、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)は、産業保健活動あるいは安全衛生活動の一部として行われます。
ILO/WHO合同委員会報告書は、産業保健の目指すところを「すべての職業における労働者の最高度の身体的、メンタルヘルス的及び社会的ウェルビーイングの増進と保持;労働者全体について、彼らの作業条件に起因する健康からの離脱の防止;健康に不利な要因に起因する危険からの就業中の労働者の保護;彼らの生理学的、メンタルヘルス的能力に適応した職業的環境への労働者の配置と保持、まとめると:人への作業の適応とその仕事へのそれぞれの人の適応」とまとめています。ここでは、生産性の向上を第一義の目的とはしていない点にも注目したいです。産業保健は、結果として生産性の向上に寄与するかも知れないが、直接そのために行うものではないと読み取ることができるのです。
過去に出版された産業精神保健の啓発書(産業メンタルヘルスの啓発書)の中で、「企業における精神衛生管理(企業におけるメンタルヘルス管理)の第一目標は、あくまでもいかにして働く人々の精神の健康(働く人々のメンタルヘルス)を守り、労働者のメンタルヘルスを高めるかということに向けられるべきである。精神衛生管理活動(メンタルヘルス管理活動)を正しく展開することによって、企業にとっても、労働力の確保、生産性の向上が期待できるとしても、これは決して第一義的なものではない。メンタルヘルス管理活動の視点を誤るならば、精神衛生管理(メンタルヘルス管理)というものが単に人事管理の一つの手段にすぎなくなり、不適応者やメンタルヘルス障害者をただ職場から排除するための手段に利用される恐れがある」と述べられているが、これは、産業保健職などメンタルヘルス職にとって、今日でも肝に銘じなければならない事項です。産業保健職などメンタルヘルス職は、産業メンタルヘルスの視点の多様性を理解しながらも、自らの産業メンタルヘルス活動が職場のメンタルヘルス活動から逸脱していないかを自戒していく必要があります。加えて、外部メンタルヘルス専門機関(精神科・心療内科)と連携してメンタルヘルス相談活動やメンタルヘルス教育・産業メンタルヘルス研修を行う場合にも、産業メンタルヘルスの複数の側面・視点を事前に確認し、すり合わせておくべきです。
産業保健における問題解決には、一定の手順に従って、労働衛生(産業保健とほぼ同義)の3管理である「作業環境管理」、「作業管理」、「健康管理」を効果的に進める必要があり、そのためには、労働者および管理監督者に対する教育、情報提供(労働衛生教育)が重要です。これらが全体として、うまく機能するように管理することを総括管理といいます。労働衛生の3管理、労働衛生教育、総括管理は、労働衛生の5本柱と称されることもあります。最近では、労働安全衛生マネジメントシステム、リスクマネジメントの手法の導入も重要視されています。
産業精神保健活動も、産業保健活動の一部(産業メンタルヘルス活動も、産業保健活動の一部)である以上、この考え方を適用すべきです。個々の労働者のメンタルヘルス不調の評価ばかりに目を向けて、職場のストレス要因への働きかけ(作業環境管理、作業管理に該当する)を軽視することがあってはならないです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。