2019年08月21日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の13回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎産業精神保健(産業メンタルヘルス)活動における今後のメンタルヘルス課題(Ⅰ)
●産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフのメンタルヘルス相談への対応能力
⇒産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフは、事業場の心の健康づくり対策(事業場のメンタルヘルス対策)のあらゆる場面において、メンタルヘルス不調者と管理監督者をメンタルヘルス支援しなければならないです。特に、メンタルヘルス不調者からのメンタルヘルス相談対応においては、メンタルヘルス不調者のメンタルヘルス状態を把握するとともに、メンタルヘルス不調者がかかえているようなメンタルヘルス面の問題が保健指導レベルのメンタルヘルス問題なのか、専門的なメンタルヘルス科治療レベルのメンタルヘルス問題なのか、または職場へのメンタルヘルス的な介入が必要なレベルのメンタルヘルス問題なのかなどについて、判断しなければならないです。メンタルヘルス疾患に関する労災や民事訴訟が急増するなか、少なくとも専門的なメンタルヘルス科治療が必要なメンタルヘルス状態であるか否か、仕事でのストレスの軽減がぜひとも必要なメンタルヘルス状態であるのか否かといったことについて、ある程度正確なメンタルヘルス状態に関するアセスメント(見立て)ができないと、企業の安全配慮義務をメンタルヘルスの専門的な立場からサポートするといったメンタルヘルス的な役割は果たせないでしょう。なかでも現場において最も遭遇する頻度の高いうつ状態などメンタルヘルス不調に関するアセスメントは重要です。
うつ状態などメンタルヘルス不調については、一般的に考えられている以上にメンタルヘルス科治療の対象になる割合が高いが、メンタルヘルススタッフがある程度自信をもってメンタルヘルス状態に関するアセスメントができるようになると、メンタルヘルス科受診への動機づけもスムーズに行われるようになります。メンタルヘルススタッフ自身が、メンタルヘルス専門家(精神科医・心療内科医)のメンタルヘルス科治療の対象になるのかどうかはっきり自信がもてないメンタルヘルス状態で精神科や心療内科などメンタルヘルス科への受診をメンタルヘルス不調者に勧めても、メンタルヘルス科への受診行動に結びつく確率は高くはならないです。しかしながら、多くの産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフは、身体疾患に関する知識に対してメンタルヘルス疾患に関する知識やメンタルヘルス状態に関するアセスメントの技術が相対的に低い傾向がみられます。例えば、高血圧症のケースのように、メンタルヘルス不調者に対しても、そのまま経過観察でよいか、睡眠の取り方などに関する保健指導だけでよいのか、もしくはメンタルヘルス科治療やメンタルヘルス上の措置が必要かどうかなどきちんと責任もってメンタルヘルス状態に関するアセスメントできなければ、産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフとしての役割を果たすことはできないです。
最近では、産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフ向けのうつ病などメンタルヘルス疾患を中心としたメンタルヘルス教育が盛んに行われるようになっているが、職場のメンタルヘルスにおいては知識教育だけでは対応できないようなメンタルヘルス相談のケースも少なくないため、常にメンタルヘルス専門家(精神科医師・心療内科医師)と連携できるような職場のメンタルヘルス態勢を整えておくべきでしょう。今後のメンタルヘルス教育においては職場外のメンタルヘルス専門家(心療内科医・精神科医)によるスーパービジョンを受けながらのメンタルヘルス実践教育も検討されるべきかもしれないです。
●自殺防止へのメンタルヘルス対応
⇒本来の産業精神保健活動(本来の産業メンタルヘルス活動)のなかに自殺予防の視点をどの程度含めるかについてはまだ多くの疑問が残されています。また自殺防止対策は本来、国レベルで考えるべき大きなメンタルヘルス問題であり、企業で自殺防止のための総合的な職場メンタルヘルスプログラムを展開できるものでもないです。しかしながら、企業においては、職場のメンタルヘルス活動の結果として自殺が防止されることを期待されているのが現実であり、たとえ職場のメンタルヘルス活動が部分的ではあっても自殺予防に結びつけることをめざすべきでしょう。自殺防止に対しては、事業者が過重労働防止など責任ある労務管理を遂行することが何よりも大事なことであるが、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)においても自殺の大きな原因疾患であるうつ状態など職場のメンタルヘルス不調および職場うつ病などメンタルヘルス疾患予防のメンタルヘルス対策を推進することは、自殺予防へのメンタルヘルス上の取り組みとして有用なことだと考えられます。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。