2019年07月27日
千里中央(大阪府豊中市・北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科(メンタルヘルスケア科)・復職支援(リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の5回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎職場のメンタルヘルスに対する行政の動き(Ⅰ)
●安全衛生法とメンタルヘルス①
1.THPと快適職場づくり
⇒労働者のメンタルヘルス管理に関して事業者が行わなければならない取り組みは、主として労働安全衛生法(以下、安衛法)によって規定されています。安衛法に初めてメンタルヘルスに関する事項が明確に記されたのは、1988(昭和63)年でした。労働者のメンタルヘルスの保持増進対策が事業者の努力義務と位置付けられ、労働者のメンタルヘルス保持増進対策の具体的な内容について「事業場における労働者のメンタルヘルス保持増進のための指針」が示されました。トータル・ヘルスプロモーション・プラン(THP)と呼称の付けられた、労働者のメンタルヘルス保持増進への取り組みは、メンタルヘルス測定に続いて、保健指導、運動指導、栄養指導、メンタルヘルスケアなどを行うものです。
メンタルヘルスケアの内容は、主として個別のメンタルヘルス相談であり、疾病性の認められない労働者に対し、ストレスへの気付きとストレス対処のメンタルヘルス支援などを行うことを狙いとしました。産業医などのメンタルヘルス科専門医(精神科医・心療内科医)はメンタルヘルス測定を担当し、メンタルヘルス相談は、心理職や保健師などで所定のメンタルヘルス専門研修を修了したメンタルヘルス専門スタッフによって行われます。メンタルヘルス相談の結果(要点)は産業医などメンタルヘルス科専門医師(精神科医師・心療内科医師)に報告され、職場のメンタルヘルス状況によって産業医などメンタルヘルス専門医(心療内科医・精神科医)が職場(上司、人事労務担当者など)と連携することで、職場のメンタルヘルス問題の解決を図ることとされました。THP指針は1997(平成9)年および2007(平成19)年に改正され、事業場のメンタルヘルス状況に応じて、4種のメンタルヘルス指導の一部を実施することも可能とされています。
1992(平成4)年には、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(快適職場指針)が公表されました。労働災害やメンタルヘルス障害をもたらさないだけではなく、労働者が快適に仕事をできるメンタルヘルス水準の職場環境の実現を事業者に求めた内容です。主として物理化学的因子が取り上げられたが、メンタルヘルスに関連が強い事項としては、労働者の疲労やストレスを軽減するための休憩室、メンタルヘルス相談に応じることのできるメンタルヘルス相談室等の確保が盛り込まれました。
以上2つは、労働者のメンタルヘルス不調の一次予防(「セルフメンタルヘルスケア」や「ラインによるメンタルヘルスケア」)を狙いとするものであり、1990(平成2)年前後に労働者のメンタルヘルス障害の未然防止が、メンタルヘルス不調者など労働者個人への働き掛けと職場環境への働き掛けの両輪の形で示されたことになります。
その後、バブル崩壊により景気は長期にわたり低迷しました。多くの企業で組織の再編や事業の見直しといった大きな変革がなされました。上述した労働者のメンタルヘルスの保持増進に向けた施策は安定した企業活動を基盤としたものであったため、労働者のメンタルヘルス保持増進に向けた取り組みを縮小したり中断したりする事業場が数を増しました。行政もメンタルヘルスに関して大きな動きを見せなかったです。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科(メンタルヘルス科)・職場復帰支援(リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。