2018年09月10日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の100回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖リワーク(Re-Work)とは?〗(Ⅹ)
◎「復職支援手引き」の概要(「リワーク手引き」の概要)と具体的な復職支援の進め方(リワークの進め方)❽
⇒第3ステップで決めた職場復帰プラン(リワークプラン)にしたがって職場復帰支援(リワーク支援)を行っても、メンタルヘルス不調の再発・再燃が繰り返される例、業務遂行能力の回復が進まない例は存在します。そうした例に対しては、個人要因の影響が強いと断定する前に、少なくとも以下の事項については、当てはまらないかどうかを確認する必要があります。
ⅰ)軽すぎる業務負荷
上司に業務負荷を軽減しなければならないという意識が強すぎる場合などで、極めて負荷の少ない業務が与えられることがあります。期限が全くなく行うことに意味が感じられない作業、1日をかけて行うように指示を受けたが1、2時間程度で終えてしまうような作業などです。急激に業務負荷を高めるのが好ましくないことは自明であるが、あまりに負荷の軽い作業を続けさせると、当該労働者は、同僚の業務負荷との落差から、疎外感、無力感あるいは焦りを強め、メンタルヘルス不調の再燃をきたす可能性があります。
ⅱ)生活リズムを崩すような業務上の配慮
前述したように、職場復帰は、生活リズムが安定して、通常の出勤時間に間に合うように起床し、日中のまとまった時間何らかの作業を行える段階にあること(リワークは、生活リズムが安定して、通常の出勤時間に間に合うように起床し、日中のまとまった時間何らかの作業を行える段階にあること)を必要条件にするのが一般的であるが、職場復帰後(リワーク後)もこれを継続するのを後押しするような配慮が望まれます。
決められた出勤時間に遅刻しがちになった場合には、それを容認し続けるのではなく、そのような状態になっている理由を本人から聴き取り、業務内容の見直し等、可能な範囲で調整を行います。
ⅲ)不明確・不適切な業務指示
当該労働者の上司が多忙であったり、出張等が多かったりするために、本人とあまり接触ができないことがあります。上司としてはできる限りの声かけや業務に関する指示を行っているつもりではあっても、本人が気後れして、悩みや困難を相談できずにいる例は少なくないです。そうした場合は、上司の代行役を指名するなどの工夫が望まれます。
ⅳ)不十分な評価
業務の指示が出されても、それを当該労働者が遂行できたかどうかの確認が確実に行われないと、職場復帰プランの適切な見直し(リワークプランの適切な見直し)ができないです。ひとまとまりの業務ごとに本人と上司がその進捗状況や結果について話し合い、総体的な業務遂行能力の回復状況を確認し合うとよいです。
ⅴ)矛盾した対応
上司によっては、職場復帰時(リワーク時)および復職当初(リワーク当初)は、手厚い業務の軽減や声かけ等を行うが、本人の業務遂行能力が期待どおりに回復しなかったり、欠勤がみられたりすると、急に冷淡な態度をみせる場合があります。職場を管理する立場の苦労を慮ると、理解ができないことではないが、そうした対応は決してよい結果をもたらさないです。
産業保健職が、具体的にいつまで職場復帰後のフォローアップ(リワーク後のフォローアップ)を継続するかは、本人側および職場側双方の事情によって異なります。多くの例では、就業面の配慮が解除された時点が目安になろうが、本人側の事情として、①メンタルヘルス不調の再発あるいは再燃の危険が高いと判断される場合、②過去に自殺未遂がみられたか希死念慮が高まったことがある場合、職場側の事情として、(a)(メンタルヘルス不調に陥っていない労働者にとっても)過重であるような労働を強いられる傾向がある場合、(b)上司や同僚の目が行き届きにくく本人のメンタルヘルス不調の発見が遅れる可能性が高い場合、(c)職場の再編などによって、本人にとって慣れない職場環境で慣れない業務に従事せざるを得ない場合などでは、復職後のフォローアップ期間(リワーク後のフォローアップ期間)を長くとることが検討されてよいです。
産業保健職による復職後のフォローアップが継続(リワーク後のフォローアップが継続)している間は、当該労働者はまだ自分が以前と同様には見られていないという意識を持ちがちです。そのため、できるだけ早く復職後のフォローアップが解除(リワーク後のフォローアップが解除)になることを望む労働者も多いです。当該労働者が復職後のフォローアップの解除を願い出た(リワーク後のフォローアップの解除を願い出た)場合、産業保健職は、本人や上司とよく話し合い、訴えの背後に焦りや非合理な思い込みがないかどうかを見極めることが望まれます。そのためには、主治医(精神科医・心療内科医)と連絡をとり、意見を入手するのもよいでしょう。
また、こうした職場復帰後の特別なフォローアップ(リワーク後の特別なフォローアップ)の終了後も、産業保健職には、メンタルヘルス診断時等の機会に職場適応の持続状況を見守っていくことが望まれます。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。