2018年08月24日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の92回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖リワーク(Re-Work)とは?〗(Ⅱ)
◎メンタルヘルス不調者などうつ病休職者の職場復帰(うつ病休職者のリワーク)と職場復帰支援(リワーク支援)
⇒かつて、メンタルヘルス不調を有する者の職場復帰(あるいは社会復帰)(リワーク(あるいは社会復帰))と言えば、主として統合失調症、重度のうつ病などメンタルヘルス障害といった社会的な偏見が強く、メンタルヘルス障害の発症前に比べ業務遂行能力の明らかな低下を認める例や安全面への配慮が大きな問題となる例が議論の対象でした。しかし、昨今では、そうした例に加え、比較的メンタルヘルス症状が軽く、メンタルヘルス不調の発症前と同等かそれに近い業務遂行能力を見込めるメンタルヘルス不調休業者が急増しており、メンタルヘルス不調者への復職支援のあり方(リワークのあり方)も重要な課題となっています。
メンタルヘルス不調により休業した労働者の職場復帰状況(リワーク状況)は、外傷や身体疾患の復職例(リワーク例)に比べ、決して良好であるとは言えないです。
企業における病休者の職場復帰に関する(リワークに関する)諸制度は、身体疾患とメンタルヘルス疾患とで、通常異なってはおらず、それをまったく別個に定めるのは、ある意味で差別や偏見をもたらす可能性もあります。しかしながら、メンタルヘルス疾患例では、次のような特徴があるのも事実です。
①長期休業例が多い。
②メンタルヘルス疾患の再発・再燃例が少なくない。
③本人が職場復帰を希望(リワークを希望)した時点では、復職は時期尚早(リワークは時期尚早)である例が散見される。
④業務遂行能力の回復について、見通しが立ちにくい例が多い。
⑤受け入れ側にとって、復職支援のあり方がわかりにくい(リワークのあり方がわかりにくい)。
⑥メンタルヘルス障害に関する誤解や偏見などがまだ存在する。
①と②は、本人のみならず、上司、人事労務管理部署、産業保健職を悩ますもっとも重要な要因でしょう。うつ病などメンタルヘルス疾患では、遺伝的素因のない者でも、メンタルヘルス疾患の再発を繰り返すほどその次の再発をきたしやすくなることが知られています。③については、メンタルヘルス症状が軽減しても、それが業務遂行能力の回復を意味しているとは限らないこと。不安や焦りから本人や家族が職場復帰を急ぎ(リワークを急ぎ)、その強い復職要請(リワーク要請)に押されて主治医(精神科医・心療内科医)も不請してしまう例が少なくないことなどによると考えられます。
一般に、労働者が期待される業務遂行能力を十分に発揮できない場合、その理由は職場環境要因、メンタルヘルス疾病要因、個人(本人)要因の3つに分けることができます。メンタルヘルス不調の場合、メンタルヘルス疾病要因と個人要因の区別がつきにくいことや、職場環境要因と個人要因が互いに関連し合って、それらの評価や改善が困難であることが多いです。これらが④および⑤の背景になっていると言えるでしょう。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。