2018年08月07日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の82回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】厚生労働省の調査では、うつ病勤労者などメンタルヘルス不調者が2000(平成12)年頃と比較して約2.5倍増加していると報告しています。わが国では、休職に至るうつ病勤労者などメンタルヘルス不調者も少なくないです。また、メンタルヘルス不調が改善して復職に至った(改善してリワークに至った)としても、その後の再休職率が高いことが知られています。そのため、メンタルヘルス不調が改善した後に、リワークプログラム(復職支援プログラム)をはじめとした職場復帰準備性(リワーク準備性)を高めるような取り組みが全国各地で展開されています。休職に至る勤労者うつ病などメンタルヘルス不調の治療において考えておく必要があることの1つとして、各企業において個別に定められている休職期間があるということです。つまり主治医(精神科医・心療内科医)は、その期間内にうつ状態などメンタルヘルス不調の改善、職場復帰準備性の回復(リワーク準備性の回復)、就労能力の回復をめざさなければならないです。しかし、現実には難治性うつ病などメンタルヘルス障害のようにうつ状態などのメンタルヘルス不調が遷延するような事例がしばしばみられます。このような事例に対する復職支援の指針(リワークの指針)はほとんどないものの、休職開始時の情報収集、産業医との連携、睡眠覚醒リズムの回復をすることで復職成功率(リワーク成功率)を高める必要があると思われます。
おそらく、わが国の難治性うつ病勤労者などメンタルヘルス障害者は、①うつ症状などメンタルヘルス症状が遷延している、②生活リズムが十分整っていない、③職場復帰支援(リワーク支援)やリワークプログラムなどの介入(復職支援プログラムなどの介入)を受けられないケースが多い、④残休職期間内に十分メンタルヘルス症状が改善しないケースが多いことが予測されます。
そのため、主治医(精神科医師・心療内科医師)は早期にメンタルヘルス診断および適切な治療を行うことは言うまでもなく、職場との良好な連携をとること、予見性をもったうえで治療や生活指導を行うことが現時点でできることではないかと考えられます。
◎休職期間満了退職が近づいたときに考えておくこと
⇒主治医(心療内科医・精神科医)は、抑うつ症状などメンタルヘルス症状の改善のためにさまざまな介入を検討しています。難治性うつ病などのメンタルヘルス障害で長期に外来フォローしている事例では、メンタルヘルス診断の再考、薬物療法の工夫(他の抗うつ薬への切り替え、併用、増強療法など)、非薬物療法の併用(認知行動療法、対人関係療法など)、環境調整などを行うが、休職期間満了の期日が近づいたときには今後のことを判断しなければならないです。この点に対するガイドラインはなく、個々の事例に応じた判断が必要になります。さらに本来復職(本来リワーク)はメンタルヘルス症状が十分改善し、安定したメンタルヘルス状態で行うことが望ましいということを理解したうえで次のように考えます。
まず考えなければいけないことは、「上記うつ状態などメンタルヘルス不調の改善・回復」という側面と「勤労者・社員であるという患者様の地位保全」という点です。就労継続できる可能性がゼロでない場合には、主治医(心療内科医師・精神科医師)は通常復職可能レベル(リワーク可能レベル)と考えている基準をやや下げて「復職可能(リワーク可能)」という復職診断書(リワーク診断書)の作成を考えることもあります。こういったケースでは職場と臨床現場の連携を事前にしておくと復職がスムーズ(リワークがスムーズ)になる可能性があります。
実際に、上記うつ状態などのメンタルヘルス不調が十分改善していない患者様であっても事前に職場と十分に議論したうえで復職に至った(リワークに至った)事例もあります。事前に連携をとることで、職場が積極的かつ可能な範囲で最大限の配慮をしてくれる場合があります。連携が十分とれていないと、職場側は主治医の復職可能診断書(リワーク可能診断書)に対して不信感をもつことも少なくないです。職場への情報提供の際には個人情報に十分配慮し患者様自身の同意が必要であることも留意する必要があります。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。