2018年08月04日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の81回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎復職に向けた(リワークに向けた)生活リズム調整のポイント
⇒難治性うつ病でうつ状態などのメンタルヘルス不調が遷延しているなかで職場復帰を考える際(リワークを考える際)には、最低限必要な要件として生活リズムの改善が必要です。朝きちんと起床して動けることが復職の際には必要(リワークの際には必要)だからです。しかし、実際には復職直前(リワーク直前)のうつ病勤労者などメンタルヘルス不調者でもスムーズな覚醒後の離床ができないといった報告もあるので、この指導には時間が必要だと思われます。難治性うつ病などメンタルヘルス障害の状況での復職を考える場合(リワークを考える場合)には、休職期間満了退職となる前の段階である程度の復職への準備(リワークへの準備)が必要だと思われます。
■①起床後は、カーテンを開け、光を浴びて、着替えをする
休職中は、仕事がないのでどうしても家でごろごろして過ごす事例が臨床場面でよくみられます。また、パジャマやジャージで生活をしている患者様も多いように感じます。朝は、まず起床し、光を取り込む作業をするとともに着替えて生活をすることが復職準備性(リワーク準備性)を高めることに有効です。
■②復職時(リワーク時)の勤務時間に合わせた起床、就床を意識する
復職をする(リワークをする)場合には、勤務形態によって起床、就床時間が異なります。この復職をする場合(このリワークをする場合)には通勤時間まで加味したような起床、就床を考えなければならないです。入院治療の場合、多くはメンタルヘルス専門病院で起床、就床時間が定められているが、復職をめざす(リワークをめざす)際にはその個人個人の復職に合わせた(リワークに合わせた)形での起床、就床時間の指導をするべきです。最近、メンタルヘルス専門病院で行っている復職に向けたリハビリ(リワークに向けたリハビリ)としての集団リワークプログラム(復職支援プログラム)のなかで、アクチグラフを使った睡眠覚醒リズムの評価においてスムーズに覚醒できていない患者様が多くいることが報告されました。この研究ではうつ状態などメンタルヘルス不調が十分改善している患者様を対象としているため、難治性うつ病などのメンタルヘルス障害の患者様で同じようなことが起きているかは明らかではないが、覚醒後にスムーズに起きて動き出すことができるかどうかもポイントの1つだろうと考えています。
■③早い時間帯(特に午前中)から動き出す
わが国のうつ病などメンタルヘルス不調の治療においては、休養を重んじる文化が強いです。実際にうつ病などメンタルヘルス不調の急性期では、活動性を維持することは困難です。しかし、うつ状態などメンタルヘルス不調が改善してきた際には、復職に向けて体力面の回復(リワークに向けて体力面の回復)が必要となります。うつ病などメンタルヘルス不調で休職中の54人を復職決定時(リワーク決定時)の活動性によって2群に分け、復職後(リワーク後)2年間のフォローアップをした研究では、活動性が高い群のほうが復職継続率(リワーク継続率)が高かったという結果が得られました。活動性が低い休職中のうつ病勤労者などのメンタルヘルス不調者に対して、活動性を高めることが有効か否かは、はっきりとした結論は出ていないが、現実的には復職前(リワーク前)には体力面も含めた活動性を高める取り組みが重要であると考えられます。
■④睡眠覚醒リズムを阻害する要因への介入
睡眠覚醒リズム障害は上記うつ病勤労者などメンタルヘルス不調者で抱える頻度が高く、残遺症状としても多いことが知られています。上記難治性うつ病などメンタルヘルス障害の患者様の場合においても、うつ症状などメンタルヘルス症状の遷延のみならず睡眠覚醒リズム障害が少なからず存在します。メンタルヘルス専門医(精神科医・心療内科医)は初診の時点で、飲酒歴やカフェイン摂取などの聴取をして睡眠衛生指導を行うが、経過のなかで患者様が飲酒を始めたり、カフェイン摂取が過剰になったりした際には見落とされやすいです。また、最近ではスマートフォン、インターネットなどを長時間使用することで睡眠覚醒リズムを損なっていると考えられる事例も少なくないです。このような事例では、朝スムーズに起きられない、動き出せないことが多いと思われます。実際に、復職目前(リワーク目前)の上記うつ病勤労者などのメンタルヘルス不調者であってもなかなかスムーズに離床できないという報告もあり、必要に応じてこれらの要因に対して指導をする必要があります。
■⑤週末であってもリズムを大きくは崩さない
週末や休日はゆっくり昼過ぎまで寝ていたいと考える患者様も少なくないです。おそらく患者様もメンタルヘルス疾患に罹患するまでは、長期休暇などの際に大きく乱れた生活をしていても、仕事が始まる初日には、きちんと朝起きて通勤していたと思われます。そのため、「復職すれば大丈夫(リワークすれば大丈夫)です。朝からきちんと起きられます」などと述べる患者様もいるが、リズムを整えるのが難しくなっていることを考えると、休職中の週末もリズムはある程度一定にしておくことが望ましいと思われます。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。