2018年05月18日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の48回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●産業医面談のポイント
職場復帰の場面(リワークの場面)においては、産業医は医学的な見地からもう一度働くことが可能かどうかという機能性の判断をする立場になります。そのため、産業医面談では、「メンタルヘルス不調からの回復の程度」や「職場復帰後(リワーク後)のメンタルヘルス不調の再発予防の工夫がなされているか」などの観点から総合的に職場復帰の可否(リワークの可否)を判断していきます。
◎メンタルヘルス不調からの回復の程度
職場復帰に向けて(リワークに向けて)の産業医面談は、主治医(精神科医・心療内科医)から「職場復帰可能(リワーク可能)」という復職可能診断書(リワーク可能診断書)が提出された後に行われることが通常で、職場復帰して働く(リワークして働く)ことができるかどうかという観点から、メンタルヘルス不調からの回復の程度を判断することになります。よって、主治医(精神科医師・心療内科医師)の考える日常生活が問題なく送れているというレベルよりも高いメンタルヘルス不調からの回復の程度が求められることになります。そのため、抑うつ気分、意欲低下、不眠、食欲の低下といったうつ病などメンタルヘルス疾患の症状が、ある程度改善していることを前提として、面談が行われることになります。よってこれらのメンタルヘルス不調の改善が不十分な場合には、職場復帰可能の判断(リワーク可能の判断)は通常なされません。それに加え、職場復帰に必要な体力(リワークに必要な体力)やメンタルヘルス不調からの回復の程度がポイントになるので、産業医の視点は次の3点に向いています。
■休業中の生活
(対策)
家で1日中ゴロゴロしている場合と、リワークプログラム(復職支援プログラム)に通ったり、1人で計画的にリワークプログラムを行ったりしている(復職支援プログラムを行ったりしている)場合とでは、全く評価が異なります。リワークプログラムに参加(復職支援プログラムに参加)した場合には、復職支援施設(リワーク支援施設)からのリワークプログラム修了(復職支援プログラム修了)証明やリワークプログラム実施(復職支援プログラム実施)評価表などが客観的な資料として面談の際に役に立つでしょうし、1人でリワークプログラムを実施(1人で復職支援プログラムを実施)した際には、そのときにつけていた活動記録や日記などを示すと良いでしょう。
また、面談時の服装や身なりも重要な判断要素です。休業中だからと言って、ラフな格好や、無精ひげを生やして面談に望むのは、決してプラスの評価にはなりません。
■メンタルヘルス不調からの回復
(対策)
産業医としては、集中力やその持続力・記憶力など職場復帰した際(リワークした際)に必要とされるメンタルヘルス能力がどの程度回復しているかをしっかり見ています。新聞の要約などを続けている場合には、そのような成果を提示することで「文章を読み、理解し、まとめることができる能力」などメンタルヘルス能力が回復していることを印象付けることができます。
また、産業医面談になると緊張して頭が回らなくなることもありますので、どのようなことが聞かれるかを想定し、事前に話したいことを整理しておくことも重要です。これは面談のためのテクニックなのではなく、実際にそのようなことができれば十分にメンタルヘルス能力が回復しているということを示しているのです。
■現在、服用している薬について
薬の服用による眠気は職場で大きな事故につながる恐れがありますので、産業医としては気になるポイントの一つです。現在、服用している薬剤やお薬手帳を持参すると良いでしょう。また、薬の服用後に強い眠気などがある場合には、主治医(心療内科医・精神科医)と相談し、薬を飲む時間を工夫したり、薬の種類や量を調整したりしてもらうように心がけましょう。
◎メンタルヘルス不調の再発予防の工夫
■職場復帰後の治療計画(リワーク後の治療計画)
職場復帰後は、休業中と同じように(リワーク後は、休業中と同じように)平日の昼間などに通院することが難しくなることもあります。かといって、職場復帰後も通院(リワーク後も通院)と抗うつ薬の服用を継続することが必要な場合がほとんどですから、主治医(心療内科医師・精神科医師)と職場復帰後の通院計画(リワーク後の通院計画)について十分に話し合いがなされているかがポイントとなります。
主治医と今後の治療計画がきちんと話し合われていることは、産業医の視点から見ると「メンタルヘルス不調の再発予防の取り組みが適切になされている」という安心材料の一つとなります。
■休業に至った原因の分析とメンタルヘルス対策
休業に至った原因をどのように内省できているのかも重要なポイントです。もちろん、過度に原因ばかりを突き詰めることは必要ありませんが、職場という必然的にストレスが存在する場所に職場復帰するわけ(リワークするわけ)ですから、「仕事を抱え込みすぎて、うつ病などのメンタルヘルス疾患になってしまったのか?」「職場の人間関係に大きな問題があったのか?」など職場に内在するストレス原因を評価して、職場復帰後、もう一度そのような場面に遭遇(リワーク後、もう一度そのような場面に遭遇)した際にどのように解決していくのか、メンタルヘルス対策を立てておくことが重要です。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。