2018年03月28日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の29回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】●メンタルヘルス機能回復のためのトレーニング
うつ病などメンタルヘルス不調の要治療期(治療専念期)には文章を読んだり書いたりすることが億劫であったでしょうし、また瞬時の判断を求められる場面も多くはなかったはずです。むしろ主治医(精神科医・心療内科医)からは、一つの物事を深く考えたり、重要な決断をしたりしないようにアドバイスをされていたことでしょう。しかしながら、職場復帰となれば(リワークとなれば)、書類をミスなく処理したり、会議でプレゼンテーションをしたり、ときには重要な決断を下さなければならないことだってあるはずです。つまり、療養中には使わないようにとアドバイスを受けていたはずのメンタルヘルス機能(集中力・持続力・記憶力・注意力・判断力など)が職場復帰する場面(リワークする場面)では必要になってきます。人間ですので、ある程度の期間、使わなかった能力はどうしても錆びついてしまいます。だから、このリハビリ期に、その錆びついてしまったメンタルヘルス機能に潤滑油を注いで、スムーズに能力が発揮できるように脳のトレーニングをすることが重要になるのです。
そこでまずは、何かを読むことから始めてみましょう。最初は、漫画本でもスポーツ新聞でも自分の読みやすいものなら何でも構いません。何かを読むという単純な作業でも、ある程度の集中力や持続力が必要になりますから、これだけでもしばらく活字を読まなかった方にとっては、十分なトレーニングになるでしょう。それが苦にならずにできるようになったら、次は少し仕事に関係のあるものを読んでみましょう。もちろん、まだ仕事ではないので本格的な分厚い専門書を読む必要はありません。新聞の中で自分の仕事に関係のある記事や業界内の雑誌を読むことで十分です。この作業では、自分の読みやすい記事に比べて、より集中力や持続力が必要とされる上に、仕事に関連する最近の知識や情勢を把握することができるので、職場復帰をよりスムーズ(リワークをよりスムーズ)なものにする効果があります。
ここまでできるようになったら、次は文章を書いてみましょう。ここでの目標は、仕事に関係のある文章(もちろん新聞記事でも構いません)の要約ができるようになることです。と言っても、いきなり文章の要約をすることは難しいでしょうから、最初は文章を間違えないように丸写しをするだけでも構いません。手でペンを握って物を書くという作業は、脳を活性化させる刺激を与え、記憶力や注意力などメンタルヘルス機能の回復に重要な役割を果たします。そして、文章の重要な部分を簡潔にまとめられるようになってきたら判断力などメンタルヘルス機能が少しずつ回復をしてきた指標になります。そして、仕上げは、紙にキーワードだけを書き出し、一つの文章の要約をそのキーワードのみを見ながら声に出してみましょう。これがスムーズにできるようになれば、職場復帰に必要(リワークに必要)なメンタルヘルス機能は十分に回復したと言えるでしょう。
メンタルヘルス不調が回復して職場復帰に向けた準備(リワークに向けた準備)を始めてよい時期になった職場復帰を目指す(リワークを目指す)方は、約1ヵ月間かけて徐々に「頭と身体とメンタルヘルスのリハビリ」を行う必要があります。生活リズム、身体的体力、思考能力の3つの能力の回復に加えてストレスを抱え込みやすい自分の性格への気づきも重要です。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。