2018年03月24日
千里中央(大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「復職支援(リワーク)」の27回目です。引き続き、復職支援(リワーク)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎起床時間が遅くなってしまう方へ
朝になかなか起きられない原因としては、うつ病などメンタルヘルス疾患のメンタルヘルス症状による場合、睡眠薬などの薬剤による影響、さらには要治療期(治療専念期)に昼夜逆転型の生活習慣が身についてしまったことなどが考えられます。そもそも、うつ病などメンタルヘルス疾患という病気は朝方にメンタルヘルス症状が強く出やすい病気ですから、メンタルヘルス不調の改善が不十分な段階では、どうしても朝方の億劫な感じが抜けずに床から離れられないことがあります。
また、逆に、うつ病などのメンタルヘルス疾患のメンタルヘルス症状が改善してきた場合には、当初、処方されていた睡眠薬では効果が強すぎてしまって、明け方まで睡眠薬の影響が残ってしまい、起きられない場合も多くみられます。睡眠薬は強く効くものから、効き方が弱いものまでいろいろなものがありますし、効果の持続時間も超短時間型睡眠薬と呼ばれる寝つきだけを助けるものから、長時間型睡眠薬と呼ばれる睡眠の維持を目的とするものまでたくさんあります。ですから、明け方になっても眠気が抜けないような場合には、主治医(精神科医・心療内科医)とよく相談し、睡眠薬を調整してもらいましょう。
そして、うつ病などのメンタルヘルス不調のメンタルヘルス症状がかなり回復をして、昼間には自分の趣味など十分に活動的な生活が送れているにもかかわらず、朝だけがどうしても起きられない場合には、要治療期(治療専念期)に昼夜逆転型の生活習慣が身についてしまった可能性が考えられます。よって、次のような方法で意識的に朝の生活習慣を改善していくことが重要です。
○朝、一度は太陽の光を浴びましょう
皆様は「体内時計」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?この体内時計により人間の生活リズムが整えられているのですが、上記うつ病などのメンタルヘルス不調を患うと、この体内時計がずれてしまい、夜になっても眠れない、朝になっても目が覚めないという生活リズムの乱れを生んでしまうのです。この体内時計をつかさどっている脳内ホルモンの一つがメラトニンという眠りを誘うホルモンなのです。
メラトニンは脈拍・体温・血圧を低下させることによって、睡眠と覚醒のリズムを上手に調整し、自然な眠りを誘う作用があります。このメラトニンは脳の松果体と呼ばれる部分から分泌されますが、この松果体は目に入る光の量をもとにメラトニンの分泌量を決定します。太陽の光を浴びることによってメラトニンが体内から消退し、夕方になり目に入る光の量が減ってくると、それを感知した松果体がメラトニンを分泌します。また、メラトニンは太陽の光が目に入ってから15時間程度たたないと分泌されないという性質があります。つまり、外が明るい時間にはほとんど分泌されずに、夕方以降暗くなってくると分泌量が増加し、夜になるとさらに増えて午前2時ごろに分泌量のピークを迎えます。その後、朝に向かってだんだんと覚醒に近づくことになります。
そこで、朝に起きることが億劫に感じてしまう人の場合は、一度は起床して太陽の光を目に入れてみることから始めてみましょう。それにより、メラトニン分泌のリズムが正常化し、少しずつ通常の生活リズムを取り戻していくことができるようになるのです。
○いつまでも寝起きの格好で過ごさないことが重要です
起床後、太陽の光を浴びることができたら、次に着替えをするようにしましょう。療養中はついつい寝巻きやジャージといった寝起きの格好で1日を過ごしてしまいがちです。
しかし、1日中、そのような格好でいると、ついつい家の中でゴロゴロとしてしまい、長時間の二度寝や昼寝につながってしまいます。もちろん、まだスーツを着用する必要はありませんが、少なくとも近所に外出できるような服装に着替え、寝ぐせを直したり、軽くお化粧をしたりと、少しずつ外出する準備をしてみると良いでしょう。
○気分のいい日は午前中の外出を心がけましょう
朝起きると多くの方が、「もう少し寝ていたい」「会社に行きたくない」と元気なときでも感じてしまうものです。でも、いざ起床して朝食を取り、家を出るとそのような気持ちは吹き飛んでしまいます。
しかし、うつ病などメンタルヘルス不調の患者様の場合、朝方にメンタルヘルス症状が悪いという日内変動がつきものですから、どうしても午前中の外出は億劫になってしまうことが多く見られます。ですから、無理に午前中に外出する必要はありませんが、もし、朝方にメンタルヘルス症状が良く、外出をしても良いなと思えるのであれば、それはメンタルヘルス不調が快方に向かっているサインですから、積極的に外出してみるようにしましょう。
午前中に体を動かすことが、本来の生活リズムを取り戻すきっかけになることも多く、メンタルヘルス不調からの回復にもつながっていきます。
以上、千里中央駅直結・千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。