2015年11月03日
皆様、こんにちは。心療内科 精神科、千里中央駅・千里ニュータウン「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「心療内科と心身症」の12回目です。引き続き、心療内科について詳しく触れたいと思います。
【続き→】心療内科では、「心身症」という病態(病状)を示す患者様に対して、心身医学的なアプローチ〈心身医学療法〉を行っています。
心身症がどういう病気かは、“心身医学の新しい診療指針”(日本心身医学会教育研修委員会編、1991年)において決められています。それをわかりやすく言い換えると、
「身体の病気の中で、発症やその後の経過に心理社会的な要因が密接に関係しているものを心身症といいます。ただし、神経症やうつ病などの病気は心身症とは呼びません」、となります。
「心理社会的な要因」というのは、例えば性格(神経質等)や行動パターン(いつも他者に合わせてしまう等)、ストレス(配偶者の死、借金、仕事の忙しさ等)などのことです。
例えば、気管支喘息はアレルギーの病気として主に内科で治療を受けます。しかし発症や経過の様子を詳しく調べてみると、心理社会的な要因が関係していることが明らかになる場合があります。ある患者様は、小学校や中学校に入学するなど新しい人間関係を作らなくてはならない状況で、決まって喘息発作が頻発していました。この場合入学という「社会的」状況の変化が、症状の繰り返しに関係していることが分かります。この患者様にとっては、新しい人間関係づくりがストレスとなって症状を形成していました。
このように病気の始まりや経過に心理社会的な要因が関係しているときに、その病気を「心身症」といいます。心理社会的な問題は、人のこころの中で葛藤状況を生じさせ、脳や神経の働きにも影響を及ぼすことがあります。心身症ではこうした精神的に不安定な状態が身体症状として現れていると考えます。さらに複雑なことに、身体的な不調もこころの働きに影響を及ぼしますので、心身症ではこころと身体の複雑な相互作用を念頭に置いた治療が必要になります。
主な疾患についての説明をします。
●消化器系の心身症
機能性胃腸症、過敏性腸症候群、心因性嘔吐症など。
●内分泌・代謝系の心身症
糖尿病、甲状腺疾患、肥満症、摂食障害など。
●呼吸器・アレルギー系の心身症
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、睡眠時無呼吸症候群など。
●神経筋肉系の心身症
書痙・斜頚、慢性頭痛など。
●循環器系の心身症
高血圧、起立性調節障害など。
●その他の心身症
疼痛性障害(慢性疼痛)、心因性発熱(psychogenic fever)、慢性疲労症候群など。
以上、心療内科、千里中央駅直結・千里セルシー3階「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。