職場のメンタルヘルス(その19) | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科「杉浦こころのクリニック」

ブログブログ

ホーム > ブログ > 職場のメンタルヘルス(その19)

職場のメンタルヘルス(その19)

2019年08月31日 

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の19回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅴ)
◎事例性の重視②
●「事例性」の考え方とそれを重視した産業メンタルヘルスへの取り組みⓐ
職場におけるメンタルヘルス不調への対応には、産業保健職などメンタルヘルス職、主治医である精神科医・心療内科医などメンタルヘルス科専門医に加えて、上司、人事労務管理者など、メンタルヘルス科専門医療職でないさまざまな立場の多職種の者が関与することになります。そうすることで、より適切なメンタルヘルス不調への対応がなされる場合が多いです。
産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)の大きな特徴の一つに「事例性;caseness」を重視することがあります。「事例性」という用語は、これまで二つの意味で使用されてきました。
一つは、メンタルヘルスの評価対象となるメンタルヘルス不調者が、メンタルヘルス疾患であるか、メンタルヘルス疾患であるとしたらメンタルヘルス診断メンタルヘルス疾患の重症度はどのようであるか(「事例性」に対して「疾病性;illness」と称されることがある)ではなく、メンタルヘルス不調者本人以前のメンタルヘルス状態からどのように偏奇しているか、所属する職場の平均からどの程度偏奇しているかを指します(狭義の「事例性」)。何らかの偏奇がみられる場合を「事例性あり」とするのです。
もう一つは、当該メンタルヘルス不調者がそのメンタルヘルス不調によって、所属する職場でどのように不利なメンタルヘルス状況あるいは不当なメンタルヘルス状況に置かれて苦痛を感じているか、そして周囲の者もそのメンタルヘルス不調のためにどのような影響を受けているかという意味です(広義の「事例性」)。メンタルヘルス不調者本人の立場が悪くなっていたり、周囲が迷惑を被っていたりした場合「事例性あり」とし、その程度がひどいと「事例性が強い(大きい)」などと表現します。
この狭義と広義の「事例性」との中間に、メンタルヘルス不調者本人が苦痛を感じていても、周囲への影響がみられない場合は、事例性があるとはみなさないという見方もあります。
産業精神保健では、広義の事例性(産業メンタルヘルスでは、広義の事例性)を扱います。職場で事例化したメンタルヘルス状態、あるいは事例化が懸念されるメンタルヘルス状態メンタルヘルス不調者本人の変化や職場への影響)を多面的にメンタルヘルス評価し、そのメンタルヘルス評価をもとにして、当該メンタルヘルス不調者および職場(上司、同僚あるいは諸制度など)に働きかけを行って、事態の収束やメンタルヘルス不調の発生予防を図るのです。職場でのメンタルヘルス不調の発生予防を図るためには、メンタルヘルス科専門医療職以外の職場関係者の関与が欠かせないです。
抑うつ症状などメンタルヘルス症状を呈し、業務効率が低下しているメンタルヘルス不調者を例にとってみましょう。事例性を重視するとは、まず当該メンタルヘルス不調者がこのメンタルヘルス状態のために、職場内でどのようなメンタルヘルス評価や扱いを受ける(例:業務処理能力を低く評価される、担当業務を担うにふさわしくない者と判断される)か、周囲はどのような影響を受ける(例:チームとしての生産性が低下する、当該メンタルヘルス不調者ができない分の仕事を分け合うことで業務負担が増す、当該メンタルヘルス不調者への配慮のためストレスが高まる)かを十分に調査し、当該メンタルヘルス不調者および当該メンタルヘルス不調者を取り巻く職場に、以前と比べ、全体としてどのようなメンタルヘルスの歪みが生じているかを詳しくメンタルヘルス評価することです。そして、次にメンタルヘルス不調者本人や職場への働きかけを通して、この職場全体でのメンタルヘルスの歪みを修復したり、新たな安定化を促したりします。
当該メンタルヘルス不調者本人抑うつ症状などメンタルヘルス症状が持続し、メンタルヘルス科専門治療を受けていないのであれば、メンタルヘルス科への受診勧奨メンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)の紹介を行い、主治医(心療内科医・精神科医)との連携の中でメンタルヘルス状態の回復の見込みを推定し、メンタルヘルス不調者本人の同意を得たうえで、職場に対して、メンタルヘルス不調者本人への対応方法、業務分担などに関する助言を行います。上司との話し合いの結果、人事労務管理部署に一時的な人員の補充を提言することがあるかも知れないです。上司や同僚が、メンタルヘルス不調者本人との関わりの中で、ストレスを過度に高めることのないように、産業メンタルヘルス活動の一環として彼らの悩みを聴いたり、助言をしたりすることも重要になるでしょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。

 

ページトップに戻る

レスポンシブウェブデザイン